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出会い系の女37

2013年05月11日 14:33

水子様って、流産だってあるわね、

ワタシの場合、堕ろしたのよ、

これって、彼や、ワタシののツゴーよね。

18とはいえ、おまんこすれば、子供ができるくらい誰だって知ってるわ。
世の中には子供がほしくてほしくて、苦しんでいる人はいっぱいいるのよ、

そして、毎日毎日、キモチイイからって、まんこのかぎりを尽くして、
挙げ句の果て、間違ってできちゃったから、って、堕ろせって言われて。

ワタシ、抵抗したわよ、産みたいって。
でも、そんなこと聞く彼じゃなかったわ。

堕ろして、産科から出てきたときの屈辱感って、涙も出なかったわ。

ワタシね、そのとき決心したの、二度度とこんな気持ち味わいたくないから、
イノチを大事にしないヒトや、男とは決してつきあわないって。

命を殺すコトってね、自分を殺すことなのよ、

産科から出てきたとき、ワタシ、そのことにはっきりわかったの。

ワタシは自分を殺したんだってネ。

そのときから彼とは一切、口をきいてないわ。
ワタシは彼と一緒に、同棲してたアパートに戻ったわ。
泣きじゃくりながらね、ベッドの布団に潜り込んで、泣いたわ。

でもね、涙が一粒も出ないの、泣いてるのよ、ワタシ。
も、ギャッンギャッン、泣いてるの。
でもね、涙が出ないの。

たぶんね、あのとき、ワタシ、人間の顔してなかったんだと思うわ。

起きてみたときは、部屋に誰もいなかったの、彼もいなかったわ。

ワタシ、荷物まとめて、その部屋から出て行ったの、



18よね、もっと年いって30過ぎたなら、こういうことはなかったんだろうけど、
その頃の心は、振動したぐらいで壊れそうになる、うす~い、うす~い、ガラスよね。

堕胎というダイナマイトみたいなモノに、も、抵抗なんておこがましいわよね。
今まで悲鳴を上げてた心のカスまで、全くなくなってしまったわ。

ヒリヒリして焼け付くようなセックス快感で、心が悲鳴あげてるところに、
トドメを刺してしまったの。


だから、あのときの、かぎりなく弱いわたしの心が、
水子様がホントのワタシかもしれないって、ささやくの。

するとね、あのときの屈辱感が蘇ってくるの。

5年過ぎて、やっと、わたしは人間に戻ったでしょ、

それでもね、あのときの心が、ささやくのよ、アレはワタシだって。

心ってね、アクマよ。

別なコトバで言えば、良心ていうんだけど、
ワタシには良心どころか、悪魔よ。

でもね、40過ぎてからは、ほとんどなくなったわ。

心がもっと頑丈になった所為ね、


だからね、心が悲鳴あげるコトって、決してやらないって、決めたの、
さっきも言ったでしょ。
それと、
イノチを大事にしないヒトとは、つきあわないってね、決めたの。


それでね、

5年過ぎたあたりに、今の夫と知り合ったの。

すんごい、やさしい人でね。

何でも話したわ、彼に話すことでね、加速度的に人間に復帰していくことがわかるの。

子供も順調にできたわ。

でもね、アノ水子様を思い出したとき、体が硬直したわ。
このときはワタシ一人じゃなく、夫もいたわ。
すると、水子様はすうっと、いなくなるの。

でもね、このトラウマは生きてるかぎり、なくならないと思うわ、
それで、イイと思うわ。

一病息災って言うでしょ、キャハ


18年間、ワタシ、夫、家族そのものだったの。

でもね、夫に男が感じなくなったの、ヘンでしょ。

夫といまでも、すご~く、仲いいわ。

それと、男とか、性とか、セックスってまた別でしょ。
それにね、夫はセックスなんて興味がなくなってしまったの。


ワタシ、も、疲れたから、あした、またメールするわね。



フッ~、やっと、男はここで一息ついた。

この女のイメージが最初とはすっかり変わってしまった。
最初は、少しはすっぱのような感じだったが、メールを読むに連れ、
表現の幼さは少しあるモノの、言っていることは、あまりにもスゴイ。

こんなコトは決して、出会い系以外では起こらないだろう。

この男にリアルで、トラウマの女が出会うのは奇跡に近い、イヤ奇跡でもない。 
しかし、出会い系では頻繁に起こる可能性は誰にでもある。
たまたまこの男はトラウマの女に遭遇した。


男は、何度も読み返した。
理解できなかったからだ。
人は経験外では理解することがかなりむつかしい。

しかし、何度も読み返すことで、相手に迫ろうと、思うことはできる。

何度も読み返すことで、トラウマの女の体験が、疑似体験であるにせよ、
この男に、ほんの少し、わかりかけてくる。

この男に、時空を超えて、体験が拡大されたのだ。

100%トラウマの女をわかるコトなんてあり得ないが、その、ほんの一端でも、
触れれば、大成功といってよい。

男はほんの一端のまたその一端に、触れたような気がした。

読み返して、男は、女の

心はアクマよ、というところが、ほんの少し、わかったような気がした。

イヤ、わからないだろう、
しかし、女がそういったことで、わかった気になった。

なるほど、そういうこともあるのか。

むろん男には、心が悪魔になるような、人生は今までなかった。
今までなかったからといって、これから先もない、とはならない。


言い換えれば、
心が悪魔になるようなことが起これば、単調な人生が劇薬の人生になる、
ということかもしれない。

男にはヒリヒリ焼け付くようなおまんこ快感もまだない、
すると、心が悪魔になれば、焼け付くような快感が、発生する条件になるのかもしれない。

トラウマの女が味わったような、ヒリヒリ焼け付くようなおまんこ快感が、
死の背中が見え始めたこの男に残されたターゲットかもしれない、と、男は思うようになった。

フェスフェレスと取引したあのファウスト博士と同じように。

トラウマの女は図らずも、18で経験した、
早すぎたのだ、代償としてトラウマになった。

なら、人生最後の4コースの3ハロンで、一気に馬体にムチ打って、勝負にかける。

トラウマの女は人生の出発点で勝負をしてしまった。後は流しているだけになった。


男は悪魔と取引してもイイという、気になった。

ファススト博士が味わった、あの焼け付くようなヒリヒリする快感..


理性的なだけが人間でない、狂気もまた、立派な人間だ。

ファウスト博士も人生の晩年まで、理性的な人間だった、
しかし、理性で解決できないモノがこの人生にあるような気がした。

ファウスト博士は70になるまで、金を作る、錬金術師であった。
しかし、金は理性で作れない。

なら、最後に残った一粒の人生に、狂気に賭けるのは当然かもしれない。


心やさしいフツ-のニホンジンであるこの男は、
心が悪魔になったトラウマの女のメールを、はじめから何度もなんども、
読み返した。

悪魔の心を知るために。

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