休むも相場なり

「休むも相場なり 」 

本間宗久は1724年に出羽庄内で生まれた江戸時代の米商人です。

 米相場での米の商い（今でいう株式売買）によって、酒田・大坂・江戸などで

連勝して大きな利益をあげた人物であり、

大坂堂島の牛田権三郎と並んで“相場の神様”として称されたという栄光があります。



相場の神様の言葉は、暴落相場の時などには噛みしめる必要があります。

そこには生きた経験知があるからです。

彼の著書「相場三味伝」からの抜粋です。



1.米商いは踏み出し大切なり。踏み出し悪しき時は決して手違いになるなり。

　又商い進み急ぐべからず、急ぐ時は踏み出し悪しきと同じ。



2.下がる米は月頭に強く、月末二十九日晦日迄下がるものなり。



3.一統騒ぎ立つ節は、人々西に走らば、我は東に向かう時は極めて利運なり。



4.下げと見込む時、思い入れの通り下がるものなれば心易きものなれども、

　人気下がると片寄る時、かえって上げるもの故、考えに及ばざるなり。

　上げも同断、すなわち海中に飛び込む心待ち、極意なり。



5.冬中より、正二月頃迄底値段にて保ち合う米は、

　三四月より、五六月決して上がるなり。



6.急に下げ、急に上がる相場は天井底の日限定まらず、

　見計らいを取りて仕舞うべし。



7.米の高下は天性自然の理にて高下するものなれば、

　極めて上がる下がると定め難きものなり。

　この道不案内の人は迂闊にこの商いすべからず。



8.商い利運仕当たる時、先ず大概に致し、留むるものなり。

　その節一両日休むべし。



9.十人が十人片寄る時は決してその裏来るものなり。

　考えの通りに来るものなれば心易きものなれども、

　右様には来たらず、考えに及ばざるなり。

　陰陽自然の道理なり。



10.天井値段、底値段、三ヵ年続くものとあり。

　　このこと天井値段計りと思うべからず。

　　底値段も三年続くなり



11.下げかかる時は十日十二日十三日も下がるもの故、

　　能く能く見合わせ、下げを待ち買い入るべし。



12.底値段にて保ち合い、上げかかる米は二～三ヶ月に急に天井値段でるなり。

　　その節、百俵上げを的にして買い重ねて善きなり。



13.此の米是非、是非上がるべし、

　　今日中に買うべしと進みたち候節、二日待つべし。



14.われ強気の節は人も強気と思うべし、

　　われ弱気の節は人も弱気に片寄るなり。



15.足らぬものは余る、余るものは足らぬと申すことあり。

　　但し、多きものは諸人沢山と心得、油断して覚悟せず、

　　それゆえ極意不足するなり。

　　不足なる物は人々、油断無く、覚悟してととのへ置く故、

　　極意は余るなり。



16.人の商いうらやましく思うべからず。



17.腹立ち売り、腹立ち買い、決してすべからず、大いに慎むべし。



18.商い利運に向かう時、勝ちに乗るべからず。

　 百俵上げ近き時は、唯無難に取り留むることを工夫すべし。



19.底値段を見極め買い出す時は、その間の高下に迷うことなく、

   立羽を極め、百俵上げまで片買いと心得べし。



20.わが一分の了見にて商いすべからず。

    年中、三位の伝に引き合わせ、上がるか下がるかをとくと考え、

    前広より、段々見合わせ、仕掛け置くべし



21.商い進み急ぐべからず。売り買いともに思い入れ進み候時は、

    今日よりほか、商い場なき様に思うものなれども、是は功者なき故なり。



22.何程心やすき人にも、売り買い進め申すまじきなり。

    若し、了見違う時は、恨みを得るなり。



23.唯々、平日此の米上がるか下がるかを考え、仕掛け申すべきこと肝要なり。



24.一年中、商い手の内にある時は利運遠し。

    折々仕舞い候て、休み見合わせ申すべきこと第一なり。



25.相場保ち合いの時うっかり慰みに商い仕掛くることあり、

    はなはだ宜しからず、慎むべきなり。

    この商い強いて初念の思い入れを離れ難きものなり。



さて本間宗久の言葉には相場師ならではの真理がありますね。

私は自らの取引を振り返り、頷いてばかりです。

先人の知恵と言葉は、今でも生きております。

こうした言葉を素直に受け取ることで、

取引のスタイルが確立され、利益につながると思っております。