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そこに鈴が落ちていた

2009年05月05日 08:30

昔の会社の同僚の話。彼は高校時代山岳部で。大学に進学して、その時代の仲間で丹沢キャンプに行くことになったと言う。待ち合わせて。ひとり来ない。家に連絡をとったが連絡がどうしてもつかない。携帯などない時代のこと。彼は行き先のキャンプ地は知っていた。あとでひとりで追い掛けてくるかもしれないよな。あきらめて出発。夕食の時間になったが。とうとう来なかったな。急用が出来たのかな。と、皆で。そのまま夜も更けて。話も尽き、眠りにつく。ふと。目が覚める。…  ちりんっ。ちりんっ。鈴の音?あいつ!実は、その彼は登山の時いつもリュックに鈴を付けていたと言う。そう、その鈴の音に違いない。ちりんっ!ちりんっ!それが徐々に近づいてくる。ちりんっ!ちりんっ!気がつけば。皆、目を覚ましている気配。あいつこんな時間に追って来たのか!ちりんっ!ちりんっ!とうとう鈴の音は、テントの前まで来て。やんだ!
… 誰ともなく。恐る恐る。外を覗くと… 誰もいない!錯覚の筈もない。皆、聞いているのだ。言い様のない不安に駆られたまま。確認の手段もない…
一晩を明かす。誰ひとり再び眠りにつけるものはいない…
ようやく、朝が来る。重い気持ちのまま。寝不足。誰もそのことには触れない。黙々と片付け。ふと…!地面に光るもの。鈴!テントの真下だった場所。そう、それは彼の鈴!!
あとでわかったことだが。彼はその日連絡する間もなく、急用が出来たらしい。連絡は諦めて。そして、深夜。バイクを走らせていた。事故事故死!そう、あの時間に。皆が、鈴の音を聞いたあの時間。あれほどはっきりした鈴の音。皆が。翌朝に見付けた彼の鈴。しかも、テントの真下から。それにしても鈴は…
ありがちなつくりの怪談とも言える。それが本当に間違いなく同僚の身に起こった事なのか。又聞きの脚色なのか。分からないけど…

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