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見聞記-その5

2007年07月25日 11:18

[部屋探し]

時は夏、もう少しするとメキシコオリンピックが始まる。

私は未だ安ホテルに居たが、東京事務所と永い間掛け合っていた彼女(現在の家内)の渡航の話が漸く叶いそうな感じだった。

無論そのままホテルに住む事は可能だが、何かと不便である。
前のホテルと違い簡単なキッチンもない。

会社の仲間にも声を掛けていたが、やはり自分でも探さなければならない。
同級生だったEに電話でその事を話した。

数日後の休みの日、彼らが何か物件新聞で見つけたので一緒に行こうと言ってきた。
「OOO(私の事)、来るときはネクタイをして来いよ」
こちらでは一寸した営業マンでもネクタイなんかしないでラフな格好だし、会社でも営業と役員以外は殆どネクタイ無しだ。
無論我々二人の日本人はしていたが。

「こんな暑いのに何でネクタイなんだよ」
ネクタイをしていないと中国人に間違えられて、貸してもらえないからさ。日本人は部屋を綺麗に使うけれど彼らは汚すからね」

私には未だ実感として解らなかったが、時々食事に行っていたダウンタウンにある中華街を思い浮かべた。

それ程汚いとは思えなかったが、確かに全体的に雑然としている事は確かだった。
通常夕方しか行かないので昼の様子は知らない。

ともかく言われたとおりネクタイをして彼らと待ち合わせた。
先日来てくれたAさんも一緒だった。

小さなマンションの中に入ると小さなロビー風なスペースがあり奥に小さなカウンターがあった。

彼が声を掛けると、中から4,50歳代の少し痩せた感じの男が出てきた。
Aさんがこの人が部屋を借りたいと言うのだけど、と私を差しながら言った。
男は私を見定める様に見てから「その部屋はもう借り手がついてしまった」と言った。

Aさんは「そうか」と言いながら手をポケットへ。
ポケットから出てきた手には10ドル札が。
それをその男に渡すと
「そうだな、別の部屋でよければあるぞ」

映画とかで似たような駆け引きを見た事はあるが、こんな事までそうしないと駄目な事があるのかと改めて知らされました。

それにしても私一人だったらそんな事解らなかったなと、変に感心してしまった。

そこは家賃の割りに条件が良くないと思い、契約せずに帰ってきた。


その後私自身も休日に新聞スタンドで買って探し始めたが、休日の新聞は小雑誌かと思う様な色々な物が折込として入っている。二つ折りになっているその厚さだけで3センチ程にもなるのに驚いた。

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