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keiji

2011年08月02日 12:01

昨日
礼拝堂を出た律子は、自宅へ向かう電車に乗っていた。
職員寮を備えた学校だったが律子は寮に入ることをせずに自分でアパートを借りて暮らしている。
私鉄で二駅、駅とアパートはゆっくり歩いて10分とかからない。
通勤に程よい距離だと思っている。


黒い窓にはつり革にぶら下がった自分が映っていた。
髪を後ろで束ねているため、若干目が釣りあがりきつい顔を作っている。
教師はこのくらいで丁度いいと律子は考えている。
グレーのパンツスーツがボディーラインをしっかりと押さえていたが、肉付きの良さがにじみ出て周囲の男たちの視線が窓に映っていた。


律子はそれをほんの少しだけ気持ちいいと感じてしまう。
電車に乗っている間だけの自己満足はすぐに終わりを告げた。
駅の改札を抜けてアパートへ向かう間、律子は考えていた。



「助けなさい」



確かにそう聞こえた。
時間が経過した今でも声質までもはっきりと思い出せる。
幻聴かしら・・・
鼓膜を通して聞いた声ではない。
そう考えたほうが楽だと思う。
だとしたらどうして「助けなさい」なのか。
答えのない問題に取り組むうちにアパートにたどり着いていた。


玄関扉の鍵を開く前に郵便受けを確認した。
電話代金の明細と一通の封書が届いている。
宛先の書かれていない封書だった。
真っ白な便箋はかなりの厚みを持っていた。
柔らかなものが入っていることを手触りが伝えている。


(・・・)


宛先のないと言うことはここまで自分で届けてきたと言うことだ。
律子は差出人の名前を探すために封書を裏返してみた。
しかし、やはりそこもただ白いだけだった。
微かに良い香りがしている。
女性用の香水かしら・・・
律子は鼻に近づけてみた。



「助けなさい」



(また!)


急いであたりを見回してみるが、律子の視界には誰も見当たらない。


(確かに聞こえた。礼拝堂と同じ声・・・)


律子は玄関ドアを開けてアパートに飛び込むと、急いで鍵をかけた。

スーツを脱ぐこともしないでベッドに腰を下ろした律子は、しばらくボーっと天井を眺めていた。


(いったいなんなの・・・?)


手には封筒が握られたままだった。
しばらく虚ろに考えを巡らしていたのだが結論を見つけることはできるはずもない。
律子は視線を手元に下げる。


(ああ、これなんだろう?)


ベッドから立ち上がると机の上のペン立てからペーパーナイフを取り上げ、慎重に封を開ける。
切った口を丸くして中を覗きこんでみる。


ハンカチ?)


花柄模様のハンカチだと思った。
指を差し入れて取り出し四角くたたまれた布を開いてみる。


(!)


律子は思わずそれを床に投げ落としてしまった。
ハンカチだと思っていたものは女性用のショーツだったのだ。
小さなレースの縁取りの可愛い花柄のショーツと、それに包まれた一枚の紙が床に落ちている。
律子は膝をまげて座り込み、手を触れることなく観察する。


写真?)


ショーツに包まれていたものは一枚の写真らしかった。
裏向きに落ちてしまったため何が写っているのかはわからない。
2本の指先で摘むようにして写真を持ち上げると、その下には鋭角に尖ったショーツの底の部分があった。
律子は思わず口と鼻に手を当てた。
もう乾いてしまっているが、ショーツにはあきらかに体液の跡が付着していた。


自分でも覚えのある汚れ。
ショーツの上から指で触れて濡らしてしまった跡。
花柄のショーツの色を変えるほどの体液が付着していた。
気を落ち着かせて手にした写真に目を移す。
そこには律子教え子が写っていた。


(早紀さん・・・)


写真の中の早紀は制服の白いブラウスの前が開かれフロントホックの外されたブラから膨らみはじめた乳房が露わになっている。
細い両脚をくの字に曲げてその中心部分は花柄のショーツが隠していた。
スカートは穿いていない。
早の視線はカメラレンズをしっかりと捉えているようだ。


寮の部屋にも思える。
女の子らしい色使いのクッションなどが隅に写っていた。
律子の視線は小さな胸の膨らみから両脚の付け根へと移動していった。
ショーツの一部分が変色している。
状況から見て同封されてきたショーツは早紀が穿いていたものに間違いはなさそうだ。
律子は床に落ちたショーツを拾い上げていた。

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