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官能小説

2011年06月18日 10:20

「ああ、いいよ萌、逝きなさい」
夫は刺激する指の速度を速めていく。
「あ、ごめんなさい、いく、いっちゃう!」
許可を得た萌は両手で夫の肩を強く握り身体を振るわせながら達した。

大きく肩で息をしている萌を夫は抱え上げ、いっしょに湯船につかる。
身体の小さな萌は夫の膝の上にチョコンとすわり甘えることができる。
バスルームを出ると、夫はバスタオルで萌の身体をつつみお湯と汗を拭きながら言った。
「可愛いよ萌、愛しているよ」
これも毎日のことだった。
二人はそのままベッドルームへ向かう。
そして、萌を仰向けに寝かせた夫は4本の腕と脚で自分の体重を支えながら萌の身体に重なるようにする。
その姿勢のまま、舌で全身を舐めてくれるのだった。
最初、この愛撫に萌は驚いた。
特に股間お尻に舌が這ったときは全身が硬直し泣き出してしまったことを覚えている。
その時、夫は萌が落ち着くまで優しく髪を撫でてくれた。
今では十分に注いでくれる夫の愛に感謝し、萌の身体は思うまま感じて快感に喘ぐようになっていた。
この日も夫は時間をかけて萌の全身を舐め回した。
そして十分に潤ったことを確認した後、夫は開始した。
いつもの夫は、一度放出するとそれで満足し疲れ果てた萌を優しく抱きかかえてくれた。
萌は夫が一度果てる間に3度ほど達し、夫の腕の中で眠りにつくのが常だったのだ。
だが昨夜は違った。
夫は狂ったように萌の身体を求めてきた。
一度思いを遂げても、またはじめから同様の動作を繰り返す。
都合3度果てた。
一度の行為に時間をかける夫が満足し萌を開放したのは朝陽のぼり始めたころだった。
萌は数え切れないほど絶頂をむかえ、自分の身体が壊れてしまうと思ったが一生懸命に耐えた。
明日から会えないという気持ちをぶつけているのだろうと思い萌は嬉しかった。

萌は、京都の出身で地元の国立大学国際政治学を教える父を持っていた。
夫の慎二は父の教え子だった。
学生時代から優秀な慎二を父は可愛がり度々自宅に呼んでいた。
萌は当時女子高生だった。
小・中・高校と私立の女子校に通っていた萌にとって慎二は初めて親しくできた異性だった。
知性が高く優しい慎二に、恋心を持つのは必然と言えた。
父も、慎二であるならば萌の伴侶として理想だと思っていたのか、二人の心が近づいていくのを黙ってみていたのだった。
萌が女子校卒業し地元の私立女子大学に進学をしてからも、慎二は身体を求めてくることはなかった。
そして、大学4年になり就職活動を始めようとした萌にプロポーズをしたのだった。
萌の卒業を待って二人は結婚をした。
萌が初めて男性を知ったのは新婚旅行の初日だった。

成田空港で夫の乗った飛行機が見えなくなるまでデッキで見送った。
そして、そろそろ帰ろうかと思ったその時に、携帯メールの着信音が鳴ったのだ。
液晶画面を見ると、不特定に送る出会いサイトからだった。
いつもは迷惑メールと決めつけ無視をするのだがこの日の萌はそれを開いて見た。
生れて初めてひとりで過ごすことの不安・期待・驚きそれらの感情が萌の行動を変化させたのかもしれない。

萌は興味なさそうに画面をスクロールしている。
どれも陳腐な文章だと思った。
萌の心をくすぐるようなものは感じられない。
もう閉じようと思ったとき、一人のプロフに目が止まる。

画面にはこう表示されていた。
 
「名前」 佐伯 幸介(サエキコウスケ)
「年齢」 39才
職業」 精神科
「PR」 貴女の心と身体をつなぎます。(料金は応談)

(貴女の心と身体をつなぎます・・・?)
これ、どう言うこと?
何故か萌の心臓がドキドキとときめき初めた。
萌自身、その理由はわからない。
そしてほんの少しのいたずら心が芽生え始めた。
不足のない幸せ、暖かな愛情に包まれた自分がもし・・・。
相手はお医者様のようだし・・・
萌の親指は返信ボタンを押していた。

・・・

幸介は萌の右手を取り、麻布の街を歩いた。
夏も夕暮れが近づき風が出ている。
その風が白い木綿のフレアスカートの裾をなびかせた。
顔見知りの少ない東京の街が、萌の行動を大胆にさせた。
萌は両腕で幸介の左腕を抱え込むようにして歩いた。
小柄な萌の頭は幸介の肩あたりで、幸介の匂いが萌の鼻によく届いてきた。
初めて嗅ぐ夫以外の異性の匂いだった。
そのためなのか萌は身体の芯が熱くなるのを感じていた。

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