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官能小説

2011年06月16日 10:04

「入れてもいいかい?」


(ああ、やっぱり・・・)


いつもであれば、「入れて」と言う亜紀だったが、この日はそれを言う気にはなれなかった。


「・・・」


無言で村井の様子を伺った。


村井がどう出るのか、若干の期待を持って亜紀は待った。


だが、しばらく亜紀の顔色を伺った村井は再び股間へ顔を埋めてしまった。


うんざり・・・)


亜紀村井の身体を引き離しベッドから立ち上がった。


不安そうにしている村井を横目で見ながら下着を着け始める。


「どうしたんだい?」


(間抜けなこと聞かないで!)


益々心がささくれてしまう。


(もう、このまま別れてしまってもいいかも・・・)


やけ気味にスーツを着る。


「今日は帰りますまた電話します。」


亜紀・・・」


呼び止める村井を無視して亜紀ホテルを出てしまった。


(どうしてわかってくれないの?)


自宅への帰り道亜紀はずっと考えていた。


マンションのある横浜へと、私鉄に乗ったがやっぱり痴・漢には逢うことはなかった。


マンションに着くと、そのままキッチンに向かい冷蔵庫から缶ビールを取り出すとグラスに注ぐこともせず、そのまま一気に飲み干した。


火照ってしまった身体と不満を抱えた心を冷ますためだった。


亜紀は自分で慰めることをしない。


それをすることを亜紀自身が認めなくなかったからだ。


冷蔵庫から、もう一缶取り出して、それを傾けながらデスクにあるパソコンの電源を入れた。


インターネットブラウザを立ち上げ目当てのサイトを検索する。


画面の下から上へ流れる文字を目で追いかけ、幾人もの男を流していく。


そして、亜紀マウスコントロールを止めた。


画面にはプロフィールが表示されていた。



 「名前」 佐伯 幸介(サエキコウスケ)
 「年齢」 39才
 「職業」 精神科
 「PR」 貴女の心と身体をつなぎます。(料金は応談)



うん、面白そう・・・


亜紀は送信ボタンクリックした。



1週間後・・・


幸介が指定した待ち合わせ場所は渋谷繁華街から少し入ったホテル郡の一角だった。


亜紀サングラスベレー帽で顔を隠し指定された場所に向かった。


有名な犬の銅像前を足早に通り過ぎ、大勢で賑あうスクランブル交差点を駆け抜けた。


大股に歩く太ももにズリ上がてしまうタイトミニのスカートを修正しながら亜紀は急いだ。


そうしないといけない理由があった。



佐伯ドクター・・・いったいどんなふうにするんだろう?)


職業柄、亜紀佐伯幸介のことを調べ上げていた。


日本最難関の国立東○大学医学部主席卒業し、大学院への薦めを蹴飛ばし単身渡航。


4年をついやし、イギリスインドを行脚する。


ケン○リッジ大学へ留学したことまではつかめていたが、その後の足取りは不明だった。


28歳でふらっと日本に戻る。


山陰地方の有力者の家に生まれ、祖父と父は県会議員経験者、兄は現役の国会議員だ。


大学時代まではすこぶるつきのエリート・・・それがどうして?


道さえ踏み外さなければ、今頃東○大学病院の教授に納まっているはずだ。


亜紀の常識では理解できない部分はあるが、このキャリアなら、万が一の間違いもないのだろうと思う。


それが亜紀見解だった。


指定されたマンション前に到着すると幸介はもうそこに立っていた。


背が高い。


それが第一印象だ。


一重瞼の切れ長の目。


大きく存在感のある鼻。


薄くしまった唇。


適度に焼けた素肌。


胸元にわずかに覗ける筋肉


笑顔になると二重になるのも愛嬌があっていい。


(うん!合格98点)


亜紀は何でも点数にするのが癖だった。


「やあ!」


「こんにちは・・・」


(どうして、なんの迷いもなく私だと思ったのだろう・・・もしかしてこのビルの住人かもしれないのに)


不審に思った。


「ああ、サングラスベレー帽


(そうか・・・正体を隠しているから。)亜紀は納得した。


「さすがですね・・・」と幸介が付け足した。


(うん?彼、私の考えていることがわかるの?)


亜紀は不思議な感覚に襲われていた。


「まあ、いいじゃないですか・・・行きましょうすぐそこです。」


幸介は有無を言わせずに亜紀の手をとりホテルに向かって歩き始めた。


亜紀も黙ってついていく。


(そう・・・この力強さが欲しいの)


「約束したこと・・・」


「ええ」


幸介の問に亜紀はコクンと首を縦に振った。

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