レッド・ウィング、アイアンレンジャー

空気の色が変わった。そう感じた日の朝、私は迷わず、クローゼットの奥に眠らせていた長年の相棒、ワークブーツを取り出した。もう何度目の冬の始まりだろうか。

手入れの行き届いた茶色の革は、磨くたびに色艶を増し、私の足の癖をしっかりと記憶している。このキャップトゥの重厚な佇まいを見ると、単なる道具ではなく、多くの困難な現場も共に歩んできた「戦友」のような感慨が湧く。
紐をきつく締め、足元を固める。この重みが、私に「地に足がついている」という確かな感覚を与えてくれる。それは経営における決断の姿勢にも通じるものだ。

移動中のエスカレーターで、思わず足を止めて見下ろした。無機質な金属のステップの上で、ロールアップしたデニムとブーツが静かに存在している。

派手な飛び級ではなく、日々の小さな手入れと、一歩一歩の確かな踏みしめによって、堅牢な基盤と独特の風格を築いていく。会社もまた、このブーツと同じだ。その過程でついた傷や皺が、そのまま歴史であり、魅力となる。

この頼もしい相棒を得て、今季もまた、新たな一歩を踏み出す。心地よい静けさに満ちた、充実の週末の始まりだった。