緑

普段はあまり酒を飲まない。
けれど、ごくたまに“心の呼吸”みたいな時間が欲しくなる日がある。
そんな夜は、静かなバーの扉をそっと開ける。

今日は久しぶりにシャルトリューズ・グリーン をストレートで。
深い翡翠色がグラスの底に沈んで、照明に揺らぐだけで何だか儀式めいて美しい。
一口含むと、鮮やかな薬草の香りがふわりと立ち上がり、あとから甘さと鋭さが静かに広がってくる。

強い酒なのに、どこか優しい。
体の中心にひとつ温かい灯りがともるようで、その感覚を確かめながらゆっくり味わった。

酒量はいらない。
こういう“一杯の存在感”があれば、それで十分だと思える。
静かで落ち着いた夜を、緑のリキュールがそっと支えてくれた。