- 名前
- waoo
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- 66歳
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- 埼玉
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- 仕事)ソフト開発/生損保代理店 私事)現在独身[バツイチ8年目] PR)飲み友/遊び...
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長女の生還【終章】・・専門医説得~Happy Wedding
2009年06月18日 16:38
【葛 藤】
・・まだ、午後の4時前だった。
帰ると妻が、南西に面し日差しの残るリビングで次女に絵本を読んでいた。
次女は、私の後ろの大好きな姉の姿が目に入ると、予め一緒に遊ぶ事を考えていたかの如く、手を取り部屋へ引っ張って行った。
妻は何も言わず、黙って立ち上がり、珈琲を落とし始めた。
私は、ソファに座り、医師の所見を反芻した。
珈琲の香りが立ち込め、それぞれのマグを配置した妻が声をかけた。
私の二口、三口飲む様子を黙って観ていた。
何から伝えるべきか逡巡した。思い切って口を開いた。
「脳波シートの分析の結果、1ヶ所だけ異常な波形が有ったんんだってさ・・。」と洩らした。
依然、妻は黙っていた。
さすがの暢気な妻も、以前のチアノーゼが何らかの影響を及ぼしている懸念を、日中に、しかも長女の平常時に生じた事態で受け止めざるを得なかった。
この1週間余、片時も娘を傍から離していなかった。
通園中のカトリック系幼稚園にも事情を説明し、取敢えず検査結果が出るまでの限定協力を依頼し、快く了解を頂いた動きも聞いていた。
表情をみず、続けて言った。
「異常な波形の示す症状を特定する為には、脳神経科の専門病院で再検査が必要らしい!」と感情を込めずに伝えた。
「希望すれば、今日診て頂いたW先生が、専門病院をへの紹介状を書いて頂けるそうなんだ。ただ、CTスキャンやMRI検査は、脳内の損傷が、あまり小さいと解析画像が粗くて、判別が難しいらしいんだ。」
「当日やった脳波測定が、短時間の区切られた断片データとは言え、最も精度は高いらしい」
と私が言うと、
さすがに不安を募らせた妻が、漸く口を開き、
「何度でも、時間ももっと長く脳波測定をすればはっきりするんじゃない?」
と言った。
妻の焦りを宥(sizu)め、自身を落ち着かせる為、珈琲を含んで、(病院で自身が投げかけ先生から得た)答えを
「僕もそういう疑問が浮かび聞いたさ。」
「先生が話してくれたのは、発症直後の測定データに、異常波形が5%以上顕われている場合は、平常時の再測定でも、捉えられるかもしれないが、麻○子の場合は、3分のデータ中1ヶ所だけだった事で、平常時だと顕われない可能性が高いらしいんだなぁ・・。」
と伝えた。
一気に所見を吐き出した。
「ただ、僕ら親としての判断を求められたのは、万が一、同様の意識障害が、僕らの目の届かない外出中に、しかも交通量のある往来や、自転車など転倒を伴う状態で、起きた場合は、二次的な危険な災害を招く可能性が有るから、詳細検査で原因と病名を確定させ、早期治療に踏み切るかどうかって事なんだ・・。」
妻の目と表情は、依然、納得の様子はなかった。 ふと妻が、思い出した様に核心の質問をした。
「先生のおっしゃった、異常波形の表す症状って、いったい何なの?」
私は、呻く様に言った。
「癲癇症の特徴を示す波形らしい!」
妻は、すかさず、
「癲癇って遺伝性の病気かと思った。」と言い、
「あたしの身内では聞いた事無かったけど、貴方の方はどう?」
真剣な眼差しで問うた。
応えて言った。
「僕の方も記憶に無いから、君の方はどうなのか聞こうと思ってたんだけど・・。」
「となると、遺伝性では無さそうだから、原因は、あの時のチアノーゼのダメージの影響って事だけど、先生から、もう一つ投げかけられたのは、症状が確定したら、直ぐに投薬治療を始める了解を、僕らが出さなきゃいけないらしんだよ。」
と言うと、妻は、少し表情を緩めながら、
「薬を飲む事で、症状が出ないのなら、安心の為にも早く始めた方が好いんじゃない?」
あっさり応えたので、妻の理解を促すために説明を補足した。
「この抑制剤は、飲み始めると3年から5年継続する必要が有って、成長への副作用が強く、抑制剤の投薬履歴も残る点などを、先生は、僕らに含めて下さって、1週間の猶予を話されたんだよ!?」
と暗に妻に再考を求めた。
妻は押し黙った。
妻の想いは、充分伝わって来ただけに、立ち上がり妻の好む“映画音楽特集”のCDをセットし、子供達の様子を観るべく、リビングを離れた。
二人は、ジクソーパズルに夢中の様だった。
長女は着実に選択するも、次女が(2才だと選択条件の理解が至らず)、時折無理やり押し込んだのを長女が交換していた。それでも、飽きる事なく続ける様子が微笑ましく、おやつを差し入れすべくダイニングに行った。
バームクーヘンが見つかり、ホットミルクかジュースにするか問うべく、テーブルの妻を見たら、声もなく泣いていた。
ホットミルクにし、頑張っている二人に差し入れした。
【決 断】
・・診察予約日の前日まで、妻とは日常の出来事以外、話題にしなかった。
私は、翌日には先生へのある意思を決めていた。
勿論、妻も賛同してくれる確信が有った。しかし、前日夜まで話さなかった。
前期末の処理、下期の諸計画の提出承認取りを終えていた事も有り、上司への今回の事情説明了承を得て、
連日19時過ぎには帰宅し、夕食を共にし、娘達の大好きな宮崎作品を共に鑑賞し、寝付くまでの朗読役を妻から引き継ぎ果たした。
その間、長女を(感傷を排し技術屋の眼で)できるだけ客観的な観察を試みた。
そして、改めて確信した意思を火曜の夜、妻に伝えた。
「僕は、精密検査の前にもう暫らく様子を観たい。今のままで、専門病院の診察を受けると、仮にファジーなデータしか顕われなくても、安心安全の為に、投薬治療に進まざるを得ない気がする。」
「投薬による成長への副作用を与える選択は、気が進まないし、新たな心配に繋がると思う。」
「それに初診で触れていた、体力を越えた運動だったが故の“急性脳貧血”の症状の可能性もあるわけだから、それなら、言い聞かせる事で、あの子なら慎重に行動できると観ている。」
「仮に、チアノーゼのダメージの影響だとしても、行動に過度な負荷をかけない=先日と同様な状況を作り出さない事を気をつけ、様子を観たいんだ。」
「次に意識に関わる症状が現れた場合には、無条件で精密検査→抑制剤の所定期間服用を受け入れる。」
「・・という逆提案を、W先生に明日伝えたいのだが、どうだろう?」
妻の表情に笑みと共に、涙がつたった。
「この1週間、あたしの責任で病気にさせたんじゃないか・・。 安全の為とは言え、副作用のある薬は飲ませたくない。 この子はどうなってしまうんだろうって、不安ばかりが膨らんで気が気じゃ無かった。」
嗚咽した。
余計な心配を煽るまいと思って、途中話さなかった事が、妻の不安を増幅してしまった事を反省した。
込上げた感情が収まると、妻は言った。
「あたしも賛成です。明日は4人で先生のところに行きましょう。」
晴れやかな表情をつくり、キッチンに行き、ロックグラスを持ち出し、サイドボードから、上司からの出張土産(で大事に飲んでいた)"Royal Salute 21”を取り出し、
「一度飲んでみたかったんだ。」と呟きながら、テーブルに置いた。
下戸でビール一杯、ワインは一杯を干せない妻が、勧めても口にしなかったウィスキーを自ら用意した事に、今回の想いを汲み取れた。
【W先生の意外な反応!?】
・・前週と同時刻に診察室に入った。
医師は、穏やかな表情で迎えた。親子4人を見てとり、看護師に椅子の追加を指示した。
妻と私で長女を挟み、妻が次女を抱いて座った。次女が不安げに長女の手を探り、長女が右手で握った。
医師が口火を切った。
「麻○子ちゃんは、何が好きかな?」と娘に問いかけた。
娘が少し間をおき、
「トトロとナウシカと、ラピュタ!」と目を輝かせ答えた。
[※「となりのトトロ」「風の谷のナウシカ」「天空の城ラピュタ」各作品]
医師が、瞬間顔をあげ、私と妻に目で尋ねた。
「二人とも大好きで家の中で、静かだなと思ったら、繰り返し見ている宮崎駿さんのアニメ作品です。」と妻が応えた。
医師が同調する様に、
「私は、実際に観てはいませんが、新聞や雑誌では、、最近の宮崎作品は、非常にヒュ-マニスティックで評価が高い様に書かれていましたねぇ。」
と娘に再度目を移しながら応えた。
医師の娘の診察に合わせ、妻がジャンパーのファスナー/シャツのボタンを手早く開いた。
医師の穏やかな表情と語り口調に、娘の緊張は感じられなかった。
表情/瞳孔・焦点反応/聴診器鼓動確認/脈取り、etc.を意外な程あっさりと切り上げた。
再度、私と妻の表情に視線を移し、問うて来た。
「如何ですか、ご判断は?」
私は、妻の表情と頷きを確認し、
「それぞれこの1週間考え話し合いました。」
「今回は、暫らく様子を観させて頂きたいと思っています。」
「次に何らかの意識障害が生じた場合は、是非、先生に専門病院をご紹介頂き、再検査や投薬治療に踏み切りたいのですが・・!?」と答えた。
医師は、想定範囲と受け止めたのか、すかさず、
「妥当なご判断だと思います。私が自分の子供に同様の事態が生じた場合でも、現時点では、躊躇したケースと受け止めています。」
「ただ、くれぐれもお嬢さんには、体力的な無理はご注意下さい。」
「そして、当分は、認識を共有した大人が目配りをしてあげる事が大切だと思います。」
「バランスの良い食事を重ねて、何事もなく小学校3、4年生ぐらいまで続けば、今回の懸念は、成長で吸収されたと診る事ができますから・・。」
と所見を断じた。
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【Happy Wedding!】
・・ 2009年2月14日、長女は結婚式を迎えた。
大学時代から4年の交際を経てのゴールインだった。
パートナーとして娘が選んだのは、やや線の細さは残るものの、率直な若者だった。
私が、自分の部下として見た場合でも、課題を与え、方向性のフォローする事で、十分平均以上の戦力たる素材と診た。しかし、娘と同席して紹介を受けた1回の会食で、下戸が判ったのが残念だった。
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【【娘へ】】
<小学校>
→エレベーターの一件以来2年間、慎重を期し、ブランクを空けたスイミング・スクールを君の強い希望で(選手育成コースは厳禁!一般コースのみとの条件ながら)再開し頑張った。そして、驚くぐらい読書をしたね。
また、君の好きな6年生の美人担任教師の奨めで、放送部の活動を頑張ったね。
<中学校>
→テニス部に入部。部活に熱心過ぎ、勉強やや下降線を君のお母さんは、不満がったのを知ってるかい?
2年生になり、練習不熱心なレギュラークラスの先輩達に悩み、退部を泣きながら相談したが、
「君が3年生になったら、今の不満を後輩達に抱かせず、実績で示す様、発想の転換をなさい!」と促し、あっさり継続を決め、やり通したね。
その代わり、入試も上位校からワンランク下げた様だが、お父さんの「高校入試ぐらいは学校と家での勉強で十分さ!」との何気無い一言を頑固に通し、塾にも行かず乗り切ったのには、少し驚いたが、ハッパをかければ良かったのではと、お母さんから叱られたのを君は知ってるかい?
<高校>
→テニスを続けるかと思ったが、放送部を選択したのは意外だったな。
「大学受験は、高校では1年時から準備をしないと志望校は難しいよ!」
とのアドバイスで、文化部を選択したのを、後からお母さんから聞いたよ。
放送部では、2年生で大会用のテーマ選びで悩んでいる時、"課題のキーワード”を君の関心のある分野に合わせたシナリオ創りを少し手伝っただけで、県大会で3位になり、NHKホールでの全国大会に出場し、決勝ラウンドまで進めたのは、君の感性が現れたものだと思ってるよ。本当によく頑張った。
<大学>
→第一志望校に現役合格したのは、本当に嬉しかった。
あの頃、既にお母さんとは、反対されながら強行したお父さんの我が侭(=将来嫁ぐ君達に、自分の生活だけに集中させる為の将来計画の一環だったのだが、予測し得なかった提携大学内の権力闘争から技術ライセンスの使用制限に遭遇し事業が頓挫!!)で冷戦状態に陥り、
結局、君の大学入学と同時に、急性下血で倒れた、お祖母ちゃんのケアの為に、一足早く通学の為に君が寄宿していた実家にお母さんも合流し、
2ヶ月後には、千○(次女)も転校させ、別居→離婚に至ったのは、
(後から状況を聞かされた)君に離婚を詰(naji)られたが、原因を作ったお父さんからは、阻止に強く出れなかったんだよ。
せめて、学費&養育費を拠出をする事しか、方法を取れなかった。
一人になり、意識はともかく、自律神経のバランスが損なわれ、2年間体調不調に苦しんだのは、
君達を手元で護る、親父として基本的な義務を負えなかった報いがストレスになって顕われたと受け止めているよ。
マスメディアと、教職の二つを視野に学部を選択したのは、賢明だったね。
結局君は、本音では指向していた、放送会社への就活を(意外だったが)全くせず、ライフワークとして取り組める教職を選択したね。
(現役寿命が短かく水面下での競争の熾烈な世界は、のんびり屋の君に最も不向きだと、実は心配してたんだ)
きっと今の仕事を選択して良かったと思う時期が来ると思う。
勿論、教職についても、モンスターペアレンツ等に悩み、一緒に食事をしながら涙を零(kobo)した事もあったが、
お父さんは、そういう君を、理不尽さに対して、児童の手前、父兄を論理的に押し込む事を控えざるを得ない、君の真摯な想いだと受け止めたのさ。
つまり、経験不足が故の伸びシロだと理解し、
○これまでの様な“真っ向から受け止める”式の直接対峙を避ける
○いきなり我慢を強いられるの環境に飛び込まず、予め複数の対応案を選択肢として用意し、自分なりの優先順位を付けて、学年主任や教頭に相談し、同席を求め、組織対応に持ち込み、責任の集中を回避する事。
○君が最も心がけなくてはいけないのは、当事者=最も非力な子供の側に立ってケアにあたる事が、最後は、理不尽さを悟らせ、円満な相互理解に繋がる事。
等々、話した事を忘れないで下さい。
そして、最後にパートナーとは、率直な想いを穏やかな雰囲気の中で、早めに早めに話し合いながら、気遣いを常に忘れない様に過ごしてくれる事が、駄目オヤジの送り出すにあたっての願いです。
君を君のパートナーに受け渡す事で、不十分だったが、父親の責任を一旦終わりにします。
父より
このデジログへのコメント
(登録以来)ROM状態だったのが、ある学生の刺激で、ログを書き始めたら、政治やメディアへの憤りだけなのを反省!
身近なテーマで書き始めたら今度は、想いが弾け長文に!~|~;(反省)
> 百合さん
拙文、目通しいただき謝々!
子を世に送り出し、パートナーに受け渡し
一区切りついた想いです。
後は、新しい家族の中で昇華されるのを
距離を置き見守るだけです。
家族って素敵やなぁ~って想いました
今の私の状況は、これでいいんやろか?と模索中ですねぇ(笑)
> しるばさん
コメ謝々!
決して“解”は日取るではなく、人生って様々な選択肢があるのでしょねぇ~_~
ただ、自分らしさを追求するか?最も弱い立場の子供のケアへの折衷案との折り合いでしょうか!?
> しるばさん
上記コメ返しに一部変換ミス有り、訂正します。
<“解”は日取る・・> → <“解”は一つでなく>
と書きたかったのです(恥)~|~;;
自分の父親に言われているようにすら感じれました。
貴重な体験、お言葉ありがとうございました!
> 美海☆さん
コメを有難う!まさに現役で格闘中のキミに多少なりとも参考になれば幸いですが・・!子育ては、圧力や型はめより、興味の方向を少し先回り。叱るより納得させ、褒め伸ばしが有効でしたよ
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