映画ではない

最近、睡眠不足。
非常に眠い。そして、頭が痛い。

映画を見ていて思う。
いつも、良い人は、ハッピーエンドだ。

24 (twenty four)をDVDで見ていても、なぜ、主人公のジャックは不死身なのか、不思議だ。

映画は、起業して成功した人の物語が多い。
雑誌を読んでいても、成功した人の体験談が載っていることは多い。

成功するのは、ほんの、一握りの人だけだ。だから、映画になるし、雑誌にも載るのだ。

世の中、そんなにうまくいかない。


大学生で、起業したいです、と軽い気持ちで言ってくる人が本当に多い。
もし、起業したいなら、最低でも、ビジネスプランを作ってほしい。
そして、ビジネスプランを見せて、
「起業したいです」と言ってくれるんだったら、まだ、何か言える。



久しぶりに、渋谷に行き、センター街を歩いた。
土曜日なので、混んでいた。


センター街を歩くと、どうしても、思いだすことがある。

友達が、大学を卒業してすぐに、バーテンダーの仲間と渋谷でバーを開いた。
自分たちの店を持った。

一度、行ったけど、かなり混んでいた。
でも、赤字が続き、8か月で閉店した。

残された借金は、600万円。
友達は、仲間と2人で店を開いたので、折半で300万円ずつの借金になった。

すべてお金は使ってしまった。そんなお金はない。

大学生のときから、バーテンダーをずっとしていて、オリジナルカクテルも、ずいぶん持っていた。
大学を卒業してすぐに、夢だった自分たちの店を持った。

店は繁盛していた。
でも、夜8時30分から、10時までの1時間30分だけ繁盛した。
あとの時間は、ガラガラ。
10席しかないバーで、1時間30分しか人が来ないので、赤字になった。

いろんなカクテルが作れるし、パフォーマンスもうまい。
だから、毎日、客は来るのだが、夜8時30分から10時までに集中する。
営業は、夕方6時から、夜12時までしていたのだが…。
バーなので、客がいれば、延長もしていた。

家賃の分だけ、稼げなければ、無理だ。
2人で必死に休日もなく働いたが、虚しく、閉店。。。


300万円の借金で途方に暮れていた時に、
いきなり、兄貴から電話があった。
「今から、行くから」
その友達は3歳年上の兄貴がいた。

ピンポーン。

友達は、ドアを開ける。
お兄さんはドアの前に立ち、封筒を渡してくれた。
そして、一言。
「これ、好きなように使っていいぞ」

すぐに帰って行った。

封筒には、300万円。

お兄さんは、普通の会社員。
大学生の時から、結婚と車を買うために、お金を貯めていた。

遊びもあまりしないで、ずっと貯めていた金を、何も言わず、何も聞かず、くれたのだ。
入社4年目。
まだ、給料だって少ないのに。

友達は、涙が止まらなかったそうだ。

お兄さんの優しさ。
何も言わずに、何も聞かず、というのは感動した。


俺達の世代は、不況の一番ひどかった時の世代。
大学でも、半分の人が就職できなかった。
また、就職が内定した人も、次の年の4月の入社前に会社が倒産する場合もあった。

俺は、大学生時代、塾で講師のアルバイトをしていたけど、3回も違う塾で教えた。
3社ともつぶれたから。

そんな時代だった。


友達は、バーで失敗した後、必死に働いた。
他のバーでアルバイトとして働いていたが、次々と閉店になった。
吉野家とか、ファミレスとか、宅配ピザなんかもしていた。
でも、そんなことをしても、たいして稼げない。

300万円なんて無理だ。


いつのまにか、俺とは、音信不通になった。
俺が、してあげられることは、会った時に、ご飯をおごったり、飲みに連れていくことぐらいだった。

でも、ひとつだけ、言えることは、
誰も、怠けていないし、誰も悪くないことだ。
友達も遊んでいたのではない。普通の人より、ずっとたくさん働いていた。


何がいけなかったのか？

開店するときに、なぜ、客の回転率、単価、などを計算しなかったのか？
10席しかないバーを2人で経営するのは無理だ。
1人で経営するべきだ。

店の家賃は、1日24時間を払っているのと同じだ。
それを、夜の1時間30分の収入で回収することになる。

かなり難しい、ということがわかる。
細かい分析をしていれば、借金もかなり少なくてすんだだろう。


起業したい、自分の店を持ちたい、という人が多いけど、本当に失敗したときは、大変だ。

その覚悟があるのか？
よく考えて欲しい、といつも思う。


映画ではない。現実の世界で生きているんだから…。