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散歩する惑星

2008年04月02日 21:38

散歩する惑星

もうすぐ公開される「愛おしき隣人」のロイ・アンダーソン監督の出世作が「散歩する惑星」です。
とても不思議な味のする映画です。
ちょっと見た感じ、青い色がかった天井の高いセットに、あまり表情のない登場人物が抑揚のないセリフをしゃべるものだから、「あれ、カウリスマキの作品?」って思います。
アキ・カウリスマキフィンランドの監督なのに対して、ロイ・アンダーソンスウェーデンの監督です。北欧の風景って、空気が青緑色なんでしょうか?
 撮影に4年間もかけたらしく、また1シーンに登場する人数とかそのセットとか考えると莫大な製作費が必要だったと思います。他の監督ならCGでやってしまうような、たとえば、はるか遠くまで続く廊下に無数のドアがあって、そこから無数の人々が出てくるシーンなんか、これ本当にセットを組んで、人数を集めて撮影しているのです。ラストのシーンもそうです。やはり奥行きのある道(まっすぐ遠方に続きます)に遠くから幽霊たちが少しずつ近づいてくるのですが、登場人物のある行動をきっかけにどこに潜んでいたのか、草むらから、これまた無数の(おそらくは)幽霊がわっと逃げていきます。こんなくだらなくも、幻想的なシーンをCGなしにとるなんて・・・。
 もっとも上記のシーンにもそんな長い廊下が実際にはあるはずもなく、半分はだまし絵を使っているようですが・・・それにしても、時間がかかったであろうシーンの数々です。
 少女の生贄(なんか合わない言葉ですが・・受難とでもしますか?)のシーンも、これまた、宗教関係者紳士たち、そして大観衆(これは作り物っぽい)が見つめる中で、目隠しをされた少女が断崖絶壁から突き落されるのですが、なんとも厳粛でかつ残酷なシーンです。
 とにかく、そのシーンとはほど遠く、見ている僕たちに感じられるのは「ばかばかしい」っていう感じなのです。この種の笑いというのは、とても懐かしい感情で、見終わって、悲しく、ばかばかしく、なつかしく・・・それで何回も見直してしまうのでしょう。僕はつづけて3回見直してしまいました。
 登場人物の中で店を燃やしてしまった男とその息子(長男はかつては詩をかいていたのに今は病院に入院し、口もきかずによこたわっている。おそらく精神病院です。次男はタクシー運転手で愛する女性と別れそうな状態。)が主軸になりますが、ベッドに横たわっている寡黙な兄に向って、次男が読み上げる詩が印象的です。僕は聞いたこともなかったのですが、ペルー詩人である、サセル・バジェホという人の詩であるとのことです。
 音楽もすばらしく、途中、地下鉄の中とか、ホテルロビーで、たまたま居合わせた人が急に合唱したり、また、タクシー運転手女性と一緒にたて笛を吹くシーンに使われる音楽は、聞いているとすごく切なくなります。あのABBAのメンバー作曲らしいです。
ツなのです。

 すごく笑えるシーンがあり、また切ないないシーンがあり、見た人をほのぼのさせる映画です。
 お勧めです。

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