- 名前
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- 性別
- ♂
- 年齢
- 59歳
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- 東京
- 自己紹介
- プロフィール見てくれて、ありがとう。 セカンドパートナーを探してます。 好奇心も性欲...
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第1章:仮面の覚醒
2026年02月14日 06:33
人影もまばらな早朝の街を、ゆうはオフィスに向かっていた。
日々水泳で鍛え上げた脚が、規則正しくアスファルトを踏みしめる。その一定の振動だけが、静寂の中に響く。冷たく澄んだ空気がシャツの襟元から入り込み、早暁の火照りを少しずつ鎮めていく。
ゆうの脳内では、数時間後に控えた本社とのオンラインミーティングのアジェンダが、歩調に合わせて整然と並び始めていた。
「輸送コストの削減案、それと東南アジア拠点の品質管理プロセス……」
口の中で呟く声は低く、理性的だ。
数字、効率、納期。感情の入る隙間など微塵もない、冷徹なロジックの世界。外資系メーカーの技術部長として、ゆうはその世界を統べることに一種の矜持を持っていた。
不意に、どこからか吹いてきた柔らかい風が、ゆうの首筋を優しく撫で上げた。
そのあまりに無防備な心地よさに、体の奥底に沈殿していた鈍く熱い質量が、じわりと疼き出す。その熱に煽られるように、記憶の底からあの「カサブランカにも似た芳香」が立ち上ってくる。
その瞬間、身体の奥に居座る重い熱が、じんわりと、静かに広がり始めた。それは波紋のように理性を浸食し、輪郭を失わせる肉体の記憶だった。
安らぎの中で溶け合う悦びと、彼という存在に飲み込まれていくことへの本能的な震え。近づきたいけれど、近づきすぎるのが怖い……そんな彼女の微かな呼気の乱れが、今この瞬間のゆうの指先にまで伝わってくる。
既に境界を失うほどに深く溶け合ったその存在を、さらに彼女の深奥へと刻みつけるように、熱く、激しく脈打たせたあの感覚。自分の中を満たしているゆうの、重く強い存在感をじっくりと味わっていた彼女の熱。
絶頂は、静寂を切り裂くのではなく、二人の境界線を完全に消し去るように訪れた。彼女の深奥がゆうの熱を必死に繋ぎとめようとし、ゆうもまた、自身のすべてを彼女の中に預けきったあの瞬間。
ゆうは思わず足を止め、視線を落とした。
愛おしさに満ちた眼差しが、一瞬だけ鋭く、そして微かに揺れる。
合理的に、効率的に日々を回しているはずの自分が、既婚者である「みお」という一人の女性に、これほどまでにも脆く、そして非合理な独占欲に突き動かされている。
守りたいという慈しみと、このまま自分の深い闇へ引きずり込みたいという支配欲。
その葛藤が、街の喧騒が近づくにつれ、鋭い痛みとともに彼の胸を締め付けていた。
ゆうは深く息を吐き、再び歩き出した。
スマホの着信音が、ゆうを現実の世界に引き戻していく。
オフィスのエントランスをくぐるとき、彼の顔は相変わらず隙のない技術部長の表情に戻っている。
だが、その視線の奥には、自分でも制御しきれない「一瞬の揺れ」が、確かに残っていた。




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