子犬を捨てに行った…

子供の頃､海辺の町に住んでいた｡歩いて10分ぐらいの場所に川が流れていて､その周辺は畑か空き地｡今はすっかり都会になっちゃったけど｡川向こうへ空き地を探して､子犬を捨てに行こうとしていた｡なぜ､川向こうだったのか今は思い出せない｡多分その子が絶対帰ってこれない場所を子供なりに考えたんだと思う｡絶対に捨ててこなければならなかったので｡抱いて行ったが､段ﾎﾞｰﾙ箱も持っていた気がする｡その箱に入れて､少しの食べ物も入れてあげて草むらに置いたと思う｡そして背を向けた瞬間､必死で逃げるようにに走った｡もと来た道を振り返りもせずに｡ついてきたら困る､本当はついてきて欲しいのに｡涙があふれて止まらなかった｡橋を渡って捨てた場所が見えなくなる位になってやっと振り返った｡もちろん､その子はいなかった｡いて欲しかったのに｡真夏の川岸の土手道は背の高い草が覆う様に生い茂り､焼けつくような太陽が照りつけていた｡もう走る必要もないのになぜか必死で家まで走った｡涙は止まらないまま…その前もそれからも実家で犬を飼うことはなかった｡自分が犬を飼うようになったのは､家庭を持ち､子供が小学生になってからだった｡