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5歳の純君

2015年09月15日 23:03

『思わず泣けるいい話』の中から、心に響く言葉


居酒屋の仕込みをしていると、いつものように、「これ買って」と干物(ひもの)を持った5歳の純君がやってくる。
この子の母親は酒びたりの生活で、生計の足しにと、息子を使い、飲食店干物売りをさせていた。
私はその都度買ってやった。
純君は保育園から帰ると、店に遊びにくるようになり、焼き鳥を串にさすのを手伝うようになった。
3年も経つと、簡単な料理も覚えて“アルバイト”になった。
もちろん、正規に雇ったのではなく、彼の生活を配慮してのことである。
片親で育った純君は、私を父のように慕ってくれていた。
中学卒業し、私の店で働いた。
そんなとき、突然、純君の母が死んだ。
他人から見れば、けっしてほめられた母ではなかったが、たったひとりの肉親だった。
少年はひとりぼっちになった。
純君は22歳のとき、都会で修行したいと旅に出た。
そして、2年後に帰郷し、独立した。
開店の案内状と電気毛布が届いた。
私は手紙を出した。
人情酒場人情劇場開店おめでとう。
5歳の君が母に怒鳴られ、私の店に干物を売りにきて買ってやった。そんな人間の心を忘れない店の名前をつけたね…」
当日、店が終わってから二人きりになり、君は私の胸にすがって泣きじゃくった。
人生劇場の紫紺(しこん)の暖簾(のれん)が、静かに揺れていた。
秋田県由利本庄市 佐藤健(63歳)》

『思わず泣けるいい話』河出書房新社


たった5歳の子どもが、物を売りに歩く姿を想像するだけで涙がこぼれそうになる。
世の中が豊かになればなるほど、そういう過酷な人生があることを我々は忘れてしまう。
三度三度食事ができたこと。
学校へ行けたこと。
たった5歳から物を売り歩かなくても生活できたこと。
そして、両親の愛情にはぐまれて生きてきたこと…
すべてのことに感謝なしにはいられない。

このデジログへのコメント

  • SYUZO- 2015年09月16日 01:29

    純君の家庭の背景もう少し詳しくしりたいですね
    ( ̄▽ ̄;)

  • なな♪ 2015年09月16日 01:44

    SYUZO-さん:伝えるって難しい

  • なな♪ 2015年09月16日 01:46

    克己さん:そうですね。私も感謝しなきゃ

  • ゆうき2 2015年09月16日 06:28

    感謝。普段は忘れがちな事です。
    考えないと。。。。

  • なな♪ 2015年09月17日 02:10

    ゆうき2さん:そうですね日々感謝です

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