- 名前
- ヴォーゲル
- 性別
- ♂
- 年齢
- 74歳
- 住所
- 海外
- 自己紹介
- もう海外在住29年、定年もそろそろ始まり、人生のソフト・ランディング、心に浮かぶこと...
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Michiel Borstlap Trio plu
2006年03月19日 01:12
Michiel Borstlap Trio plus JvR
2006年 3月 11日 ハーレム、 フィルハーモニー・ホール 約200人
Michiel Borstlap (Stanway p)
Stefan Lievestro (Fender b)
Pascal Vermeer (ds)
Jessevan Ruller (Elferink g)
ハーレムに向かう電車の窓から暮れ行く西の空を眺めていると、もう2ヶ月ほどすると様々な花がカーペットを敷いたように広大な球根畑に広がるのだが、今はまだ、整地の済んだ只の茶色の土を見せるだけで気温2度、大きく広がる空には茜色に染まる青空が大きくカーテンのように広がり霙を降らせている雲に刷毛で掃かれた如く翳りをつけられ、時々通過する農家の屋根には細かい雪が薄っすらと見える、そんな寒々とした景色をみせているだけだ。 4月も終わりに近づけばば南部リンブルグ地方からのアスパラガスが大量に青空市場に並ぶのを思い出して、その収穫にはポーランドからの季節労働者の手作業が大きく貢献しているのだが、それではチューリップの、球根の収穫は別として、植え付けはどのようにするのだろうか、機械か手かと漠然と頭を窓ガラスに押し付けて考えていた。 それで頭の中で鳴っていたのは
Brad Mehldau / Live at The Village Vanguard
The Art Of The Trio Volume 2
Warner Bros. 9362-46848-2 1997
そういえばこの前このようにハーレムに向かったのは荒木経惟の写真展とそのあとハーレムからロッテルダムに浮世絵の春画の展覧会を1日で見ようと忙しく往復した時だった。 もう半年になるのだろうか。 あのときはビル・エヴァンスのエクスプローレーションが鳴っていたのだが電車の音が雑音となって音楽に集中できなかったことを覚えているけれど、今日はそれほどでもない。 このごろどこのコンサートに行っても大抵一曲はモンクのものが出るし、ほとんど毎日聴いているのだが、あちこちのネットジャズ局のDJでも聞こえてくるので、この中のMonk’s Dreamもそのように聴いた。 けれど、このCDのは何ヶ月か前にライブで聴いたメルダウのモンクよりいい。 ただ、あいだのソロの解釈と主題演奏の乖離が大きいような気がする。 メルダウがいいという人はそういうところにひかれるのかもしれないが、ここに彼の大きい自我を見るような気がした。 Moon Riverのおっとりさにはまだそれにつきあうような体勢になっていない。 これには居間でソファーに腰を落ち着けて聴かねばならぬ気がするがそのとき居眠りをしてしまわなければいいのだが。
オランダで一番早く作られた駅なのだと道を尋ねた老夫婦に言われた。 半ドーム形の覆いがついた駅のプラットホームに古い煉瓦と木目の待合室やレストランが作られていて飾り、彫り物、に明治、大正の匂いがする。 時間があると昼食を、時間が凝固したような老人や飲んだくれに混じってこのようなレストランで摂る事がある。 味はそこそことはいえ駅舎の客と100年も経つ内装との妙なとりあわせがいいのだ。 このほかにも、北のフローニンヘン、レウワーデン、南のマーストリヒトがこのような昔の面影を偲ばせる。 隣国のアントワープの駅舎は輝かしさに加えて堂々とした姿が加わっているかもしれない。 ハーグの旧駅は修復するごとに火災を起こして元の形に戻っているとはいえ味も匂いも消えた。 そんな話を市の中心の大聖堂の脇でしていると老夫婦の犬が散歩の綱を引っ張って肝心のコンサート・ホールの場所を尋ねるのを忘れそうだったのだが、われわれは当のコンサートホールのまん前に立っていたのだった。そして半年ほど前に荒木の写真展のあったギャラリーはほんの100mにも達しない場所にあったのだ。 せまい旧市街を反対側から歩いてきたのだ。 もう20年も前になるのか、フランス・ハルス美術館もそれではここから近いに違いない。
ドアを押して中に入るとなるほど老夫婦が言ったとおり、何十億もかけただけあって現代建築の面白さがわかる仕掛けになっている。 1時間も早く来てしまって支配人が女の子たちをせかせそれぞれの配置につかせている間、私とついこの間の地方選挙があったその互いの選挙区の様子をはなして時間つぶしをした。 16世紀後半に設立されて今も有価証券、貨幣を印刷する由緒ある建物と19世紀からの1200席ぐらいのコンセルトへボーと同じ構造の大ホールと400席ほどの小ホールを組み合わせたなかなか味のある建築物だ。 で、支配人の話だと今日はこのジャズ・コンサートだけで200ほど売れたのだそうだ。 そんなことを聞きながらもらったスペインの赤ワインを手に興味本位にあちこちと歩いて廻ったのだが、ガラス張りの向こうにこの夜の演奏者たちが飲み食いしている姿がみえ、見覚えのある、前髪をたらしたヤサオトコもみえるではないか。 手を振ったら応えるから向こうもこっちを認めたのだろう。
電話で予約を入れたとき最前列中央を希望したのだがすんなり聞き入れられ、なんだ、売れてないのか、という気になったのはここだけではない。 ちょっと早く行けばあっけないほどフリーパスで楽屋でもどこでもいけるところが多いのだ。 ときには演者と一緒に入るときもあるし、スーパースターのボディーガードつき、というのに出くわしてみたいものだという気持ちになる。 フリー・ジャズなどの場合は寝転んで聴けるほどの隙間ができて、それも客の殆どが老人がでこれでは電気増幅装置を必要としないのも尤もだ。
この日は曲目の説明も曖昧なもので、作曲途中というか、そのプロセスそのものを聴かせるという趣向だったようで、しかし、それではそれぞれの曲の核になるものが曖昧かといえばそれはきっちりとしたユニゾン、ハーモニーが驚くところででてくる仕組みになっており、さすがボルストラップである。
相変わらずこのピアニストはこの世界に出たときワンダー・チャイルドと呼ばれただけのことはある。 自在に時代、様式を飛翔して駆け抜ける。 何年か前アラブのシェイクに依頼されてオペラを仕上げたその名残かアラビアンムードのフレーズも多く登場した。
ベースはついさきごろ新CDを立ち上げ、コンサートもやり、日曜午前のナショナルテレビの音楽番組でもぎこちなく、時には頓珍漢な司会者に惑わされることなく言いたいことを言う元気なところを見せていたリーベストロはこの日はフェンダーエレクック・ベースでこのグループの速い演奏にあわすべくグルーブしていたのだった。
この素晴らしく新設された小ホールの全編木目の音響効果に助けられてかJvRの自分の名前を冠したエルフリンクギターを調子よく鳴らす奏者は自分の作曲の何曲かも滑らかでしっとりとした音色を引き出すのだった。 このようなアコーステイックであればレヴィンがなくても支障はない。 そうなると自分の名が付く管球式アンプがネックになるということか。
それにアンプの音とは別にこの日初めてボルストラップのスパニッシュ、アラブモードの中でギターピックを使わずアルペジオ、そのほかの技術を右手の4本の指からはじき出すをきいたのは私にとっては新たな発見だった。
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