- 名前
- ハレイワビーチ
- 性別
- ♂
- 年齢
- 53歳
- 住所
- 静岡
- 自己紹介
- 裏ログはなんとなしに書き始めた私小説が大半を占めますが、途中から自分のために書き続け...
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ダヴィデのペニス・・8
2011年10月27日 01:00
未だ身体の奥から力が湧き出ない状態ではあったが、じっとしていることがどうしても出来ずに、翌日シティへのバスチケットを早々に買い求め、追い立てられるようにメキシコの田舎町を後にした
再びシティへと戻ると街中では メキシコ人のカップルが交わしている熱い抱擁とキス どこか薄汚れた石づくりの建物 うらぶれた路地裏でうごめくクラックの売人 たまに見かける日本人のバックパッカーの無精ひげ そういった風景が待っていた
当時、カルロス・カスタネダがヤキ・インディアンの呪術師ドン・フアン・マトゥスと交わした不思議な会話に魅せられ、漠然とメキシコの砂漠を冒険してみたい、という旅行前のひそかな想いも今の自分には現実的には思えなかった
そんな弱気な気持ちのまま国境に向かうバスに乗り込み、自分の無力さを呪っていた
隣席から定期的に煙草をねだるメスチーソを適当にあしらいながら車窓を眺めているとメキシコが過ぎ去って行った
予定を大幅に繰り上げてメキシコの旅を終えてしまったぼくは、旅行前は諦めていたニューオーリンズへ立ち寄ることに決めた
モンテレイでバスを乗り換え、ヌエボ・ラレドのボーダーを越え砂漠の大都市ヒューストンを通過すると陽気な街ニューオーリンズが待っていた
フレンチクォーター辺りの宿を訪ねたが行く先々で満室だった 街は観光客で活気に溢れていた
しょうがなく少し郊外まで歩いてドミトリーの宿を見つけチェックインした 同室のアメリカ人だかカナダ人だか、わからない20代と思われる陽気な連中と挨拶を交わして、早々にベッドにボストンバッグを置き、バーボンストリートへ出かけた
夕刻のバーボンストリートはビール片手の観光客がひしめき合っている ストリートではピアノやサックスを思い思いに弾く流しのミュージシャンが見事なまでに街に色を添えていた
ぼくはそんな渾然とした雰囲気に飲まれて、人々が賑やかに踊っている店に入ったり出たり大いに楽しんだ こんなに無邪気な気持ちになったのは旅で初めてだった
「アナタニホンジン?
変なイントネーションの日本語が聞こえ、びっくりして振り返った
店内は陽気なディキシーランド・ジャズがかかっていて、聞き取りにくかったが金髪の小柄な女の子がぼくの隣で踊っていた
「君、日本語わかるの?
「スコシネ!
そう言ってから英語混じりに変わった
「私日本人好きなの、前にね日本人、夫婦だったんだけど仲良くなって日本のいろいろなこと聞いたのよ
英語は得意な筈だったのだが、行く先々で発音やイントネーションが変わる ニューオーリンズもひどかったがそれでもなんとか話していることは分かった
彼女は短い金髪の間に深い青い目が印象的で、年はぼくと同じくらいに見える 質素なネルシャツにジーンズが彼女のやや濃い化粧が目立つ顔を際立たせた
人並みの警戒心を持っていたぼくだったが、彼女のそんな素朴ないでたちから素直に興味が湧いた
「今日朝早くに着いたばかりなんだ ホントに楽しいところだね、ニューオーリンズって 毎日こんな風なの?
「そう、ジャズとダンスが好きなら最高よ、ここは!
彼女はナンシーだと自己紹介した
彼女はぼくの手を取ってリズムに合わせて踊った ぼくも真似をしてリズムを取った
それまで病みあがりの身体にビールを飲んでいたこともあって、頭がくらくらしていた 彼女はそんなぼくをけらけらと笑い、楽しそうに踊り続けた
旅で初めて楽しい時間をくれた彼女に嬉しい気持ちを隠せなかった
「ナンシー、どこか落ち着けるところで話さない?
一瞬キョトンとした表情を見せたが、すぐにまた元の笑顔に戻った
「オーケイ、いい場所知ってるから付いてきて!
大勢が入り乱れて踊るホールの人ごみを掻き分け、ぼくらは更に賑わいを見せるバーボンストリートへ出た
このウラログへのコメント
愉しんで貰えると嬉しいなぁ。今後どうなるかはまだ分からないかも(笑
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