- 名前
- ハレイワビーチ
- 性別
- ♂
- 年齢
- 53歳
- 住所
- 静岡
- 自己紹介
- 裏ログはなんとなしに書き始めた私小説が大半を占めますが、途中から自分のために書き続け...
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ダヴィデのペニス・・12
2012年02月11日 01:15
そんな、会ったばかりだし、わかんないよ と口に出かけた時、雪が戻ってきた
りょうこは じゃあ私あいつが待ってるから帰るねと、どこかの少数民族が織ったものだろう、色とりどりの綿の平織りショルダーバッグを掴み雪に手を振りながら、掃き出し窓から出て行った
雪は手を振り返しながら
喧嘩しちゃだめだよーと、言いながら見送った
「りょうこさんはうちの学校の人と一緒に住んでるの?
ぼくは居心地の悪さを隠すように思いついたことを訊いた
「違うよー 彼女とは前に沖縄にも一緒に旅行したんだけどね、その時知り合ったオキナンチュが転がり込んできたんだ 気はいいやつなんだけどね、一日家に篭ってギター弾いてたり、本読んでる時があるんだって 変わってるでしょー
最初はわざとらしさを感じていた彼女の語尾を延ばす話し方にもやがて馴染んできた
沖縄旅行の話しには興味があったが、その時はなんだか話し進めるのはためらった
ぼくが手持ち無沙汰にしているのを感じたのか彼女は話題を移した
「わたしねー 今入れ込んでる作品があってね 神山君にちょっと見てもらいたいと思ってね
彼女は襖に立てかけてあったイーゼルや絵の具箱を脇にどけ、その襖を開けた
襖の向こうには薄暗い部屋があり、最初何も置いていないように感じたが奥に台座に置かれた白い石膏で出来た女性の頭部がうっすらと浮かび上がっているのが見えた
天井からぶら下がっている裸電球を灯すと、その少し上向き上気したような表情の頭部がはっきりと陰影を刻んだ
荒削りな彫塑ながら、白い石膏の裏側に肌の暖かさを感じた
「これ崎野さん?
崎野さんは泉さんが来る前にポーズしていたモデルだった
「そうだよ、彼女体調崩しちゃって、最近は思い出しながら仕上げてるの
美術モデルは身体的に健康であるだけでなく、精神的にも気を張っていないと続かない仕事らしく、同じモデルが続くことは稀だった
泉さんももう大学には来ないのだろうか、と沈んだ気持ちになった
「ふーん、なかなか良いね、A-1をあげよう
「あぁ、それ桂教授の真似かい? 冗談でもうれしいよ!
彼女の表情が一気にほころんだ
髪の毛も天然の癖毛をそのままに、何の飾り気も無い彼女だったが、きりっとした眉が縁取る大きな瞳はきらきらと光り、こんなに魅力的に感じられたのははじめてだった
残暑の残る夜気が網戸から入り込むなか、ぼくらはお互いの旅の話しで時間を忘れた
何処からか入り込んできた羽虫が電灯のまわりを周回してはぶつかっている
ふと古物の茶箪笥の上に積んである画集が目についた
「エゴンシーレ、好きなの?
ぼくは許可をとらずそれを拾い上げて、ぱらぱらとめくった
「好きというか、興味あったんだよー 油で人物描いてるときは彼みたいに表現するのがベストって思ってた時があってさぁ
ぼくはエゴンシーレが好きではなかった というか、はなから理解しようとしなかったと思う
それはその絵のなかに表現されているものが自分のなかに閉じ込められている、と思うことに耐えられなかったからかもしれない
雪はぱらぱらとページをめくるぼくをじっと見つめ、ぼくは画集のなかにへばりついている 強烈にお互いを求め合う男女を眺めていた
彼女の細い腕と指が恐る恐る 畳に身体を支えていたぼくの手に触れた
ぼくは彼女の顔に身体を引き寄せ、軽くキスをした
彼女と唇を合わせているまさにその瞬間に泉さんとのあの夜のことを想い出し
身体をゆっくり引き離した
「ごめん、おれそろそろ帰るよ
「神山君バイクでしょ? ちょっと飲みすぎじゃない っても私が勧めたからあれだけどさ、もうちょっと休んでいきなよ
今日は楽しかったよ
と彼女に言い訳染みた言葉を伝えただけで、何だかとてつもなくばつの悪い気持ちを抱えながら、ヘルメットを抱えて掃き出し窓の網戸を開け、温い夜風に逃げ込んだ
このウラログへのコメント
神山君って、結構悪いオトコなのでは
裸婦デッサンしたことあります モデルさん大変そうだった
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