- 名前
- ハレイワビーチ
- 性別
- ♂
- 年齢
- 53歳
- 住所
- 静岡
- 自己紹介
- 裏ログはなんとなしに書き始めた私小説が大半を占めますが、途中から自分のために書き続け...
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ダヴィデのペニス・・9
2011年11月06日 00:45
フランスの植民地だった頃の面影が残る街並みは ここではやはりアメリカらしく酒と乾いた喧騒に満ちていた そんなお祭り騒ぎの通りを外れに歩いて行くと、ゆっくりと人並みが少なくなった
コロニアル風の建物に馴染んだ古びた木の扉の奥から古い時代のジャズが聴こえる 脇の階段を彼女の後に続いて上ると静かなバーがあった ここは地元の人間が集うらしく、赤ら顔のドイツ人や若い連中は見当たらない
「この辺りはね、遥か昔のジャズが生で聴けるのよ 夜は仲間内だけなんだけど、昼は観光客にも披露してるわ
彼女はバーカウンターの内側に控えていた、髭を豊かに蓄えた黒人の男と軽口を交わした
「なに飲む?
カウンターに並んで腰掛け、彼女の前には何も言わずトロピカル風のカクテルが置かれた
それはと尋ねると彼女はひとことハリケーン、と言った
「じゃあ、ぼくはバーボンにしようかな
酒には詳しくなかったが、アメリカといえば男はバーボンウィスキーをみんな頼むのだと思った
「バーボン? あなたお酒強いのね もしかしてケンタッキーから来たの?
彼女はからかうように言った
「いや、ぼくは実はメキシコから来たんだ テキーラの方がいいかな
「お好きにどうぞ
メキシコに行ったの? メキシコからアメリカに来ようとする人はたくさんいるわね でもメキシコに行こうとするのは大抵ビジネスか、リゾート地に行くお金持ちよ
彼女は大きな青い目をきょとんとさせて答えを促すようにぼくを眺めた
「ぼくはどちらでもないよ 美術の学生で見たい作品がメキシコにあったから
アメリカよりメキシコを優先して旅した理由はもっと抽象的で感覚的な欲望からだったが当時のぼくの語彙では彼女に説明するのが面倒だった
「学生なの、あなた? トーキョー? オーサカ?
その質問の仕方になんだか嫌な感じを覚えたが、東京だと答えた
「わたしは学生になりたくって学費を貯めてるの アーカンソーの田舎町の田舎娘よ
美術学校って何してるの?
「彫刻とか造形美術だよ でもいまは建築に興味があるんだ 君は学生になって何を学びたいのさ
ぼくの家はいわゆるお金持ちでもなく、またそれに困っているわけでもない「中流」家庭であったので学費と家賃は仕送りをもらえていた でも20歳を過ぎて親の庇護にあることにどこか格好悪さと、ばつの悪さも感じていたのだ
「わたしはね、音楽をちゃんと勉強したいの 子供の頃からブルースやジャズが好きでね、独学でバンド演奏をやり続けてたの 今でもディキシーランドジャズのバンドでプレイさせてもらうこともあるのよ
何処からかトランペットの音がする 彼女はそれに合わせるようにカウンターを鍵盤がわりにピアノを弾く真似をした
「明日この下のホールでジャズバンドを演るのよ、わたしもピアノで参加するの、観にきたらいいわ!
自分の楽しみにまわりを巻き込んでいくような、そんな笑顔だった
ぼくはいつの間にかピッチをあげてテキーラが注がれたグラスを空け、いよいよ頭にもやがかかって来た 彼女もハリケーンというカクテルを何杯かおかわりして、酔っているようだった
「1年前だったのよ ふたりの日本人と会ったの ロヨラ大学の学生だったわ
お似合いのカップルでね 気が合って3人でいろいろ遊んだわ
でもわたしふたりの仲をこわしちゃったの
彼女はちょっと沈んだ面持ちでことばを繋いだ
「そんなつもりは始めはなかったのよ でも3人で過ごしてるうちに私好きになっちゃったの、彼のこと どうしようもなかったの
彼もわたしのこと好きっていってくれた でもある時彼女から「あなたは淫売の娘だ もう二度と彼に会わないでください とかいう内容の手紙が来たわ
彼女には悪かったと思ったけど わたしあんなに人を好きになったのはじめてだったの
アルコールで濁った頭のなかで 彼女の口から発する物語にはただ本を読んでいるかのような感じを受けた
そしてぼくはなぜかその時泉さんの面影を彼女に映し出していた
このウラログへのコメント
確かに一気に書き上げる時は自分でも分からなくなります 恋さんもそういう時ありません?
リアルだとすれば過去の自分を克服できるかな・・♪
いつも読み逃げでゴメンナサイ。なかなかうまくコメントできなくて。でも、あなたの姿、かいま見てます。
あまり気にしないで寄ってくださいね。
みゅうさんログにはいつもいやされてます…
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