- 名前
- ハレイワビーチ
- 性別
- ♂
- 年齢
- 53歳
- 住所
- 静岡
- 自己紹介
- 裏ログはなんとなしに書き始めた私小説が大半を占めますが、途中から自分のために書き続け...
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ダヴィデの○ニス・・5
2011年10月09日 22:52
外に出ると夜風にすこし高ぶっていた気持ちがおさまった気がした。
彼女はいつの間にか、夜道をどこか楽しげにぼくの一歩先を歩きだしていた。
そして時々振り返り、いたずらな笑顔が夜道に浮かんでは消えた。
ぼくは彼女と何処かでまだ時間を過ごしたい気持ちをなんとか伝えたかったが、ぼくに選択の余地はない、彼女と一緒にいることは彼女の意思なのだという感覚を振り払うことはできなかった。
そして駅に着いた。
「じゃあ、またね。いい旅行できるといいね。
「泉さんは今度学校にはいつ来るの?
「・・来週の水・金よ。篠原教授にモデル頼まれてるんだよね。
神山君はもう旅行に出てるでしょ?
チケットは来週の木曜にリザーブいれていた。その前に一度会いたいと思った。
「水曜にアトリエに用事があるから行くよ。
「・・そっちに顔出せるかわからないけどいい? 教授のお話し相手にもなってあげないといけないのよ。
彼女は例の荷物のたくさん入ったトートバッグから、封筒を出してぼくに手渡した。
「これね、わたしがメキシコまわった時に泊まって良かったホテルのリスト。 結構役に立つかも
封筒から年季の入ったザラ紙を取り出すと、そこには丁寧に都市別にホテル街の地図が切り貼りされ、ホテルの細かな情報が書かれていた。
「ありがとう。すごく役立ちそうだね。うれしいよ。
「なんだかね、自分が旅行するみたいな気持ちなのよ。初めて海外に行くのって不安だったから、そういうのあるとちょっと安心しない?
ぼくは正直怖いもの知らずの典型的な若者だったから、旅の情報といえば地球の歩き方を軽く目を通したくらいで能天気に考えていた。
一緒に改札をくぐり、新宿方面のホームへの階段で別れた。
ぼくは高尾方面のホームに立つと向かいで彼女は手を振りながら何か口パクをしていた。 ぼくは手を振りかえしながら何を言っているのか探っていると新宿方面の電車が入ってきた。
電車が去った後のホームを眺め、今日の彼女との抱擁がまぼろしでなかったことを必死で信じようとしていた。
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