- 名前
- ハレイワビーチ
- 性別
- ♂
- 年齢
- 53歳
- 住所
- 静岡
- 自己紹介
- 裏ログはなんとなしに書き始めた私小説が大半を占めますが、途中から自分のために書き続け...
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ダヴィデの○ニス・・4
2011年10月07日 00:18
彼女の旅の話は、とめどもなく続いた。
そこにはぼくの想像していた彼女とは違い、何か地の底から生還してきたような陰鬱な印象とともに、アルコールで潤んできた瞳にはどこか遠くを見ているようでいて、そして淫靡なものが感じられた。
ぼくも彼女のグラスを空けるスピードにいつしか合わせて、アルコールと共に話しに引き込まれていった。
まわりのテーブルはいつの間にか満席になり、薄暗い照明のなかに独特なお香の香りとぼそぼそとくぐもった話し声が満ちていた。
「メキシコはね、悲しい土地よね アメリカの国境エルパソからリオグランデ川を渡るともう違う国なんだけど、あれほど風景にギャップがあるとこも珍しいんじゃないかな 例えたら厚木あたりの川を渡ったら、そこはもう東南アジアの片田舎でした、という感じなの。 経済も破綻しかかってるしね でもそういうバランスが崩れてて、はかないような雰囲気がすごく好きなのよ
神山君はディエゴリベラ好き?
「好きですよ あの、メキシコ大学の壁画描いた人ですよね
「そう、フリーダカーロが彼の愛人だったよね
メキシコでは彼女をはじめて知ったの
彼女の表情がすっと明るんだ
ぼくは彼女の絵は正直、好きになれなかった。 なにか目を背けたい、出来ることなら関わりたくないタイプの絵だった。
今思えば、そこには普通に暮らしてる人の真実があったからかもしれない。 ほんとのことにはなかなか気づかないものだ。
「彼女の絵を見てね、不思議と楽になれたの
彼女って幼少時から足が悪かったり交通事故にあったり、はたから見たら大変な人生よ そのなかですごく自分の欲望に忠実に生きてると思ったの
彼女はぼくの目を覗き込み、しばらくじっとしていた。
ぼくは、その雰囲気に飲まれ気が付くと彼女と唇を触れ合わせていた。
それはぼくの経験したことのないキスだった。 舌が柔らかく唇を押し開け、やさしく絡まり舌や粘膜という粘膜は普段とはまるで違う感じ方をしていた
まるで、お互いの口が同化して溶け合っていた
口では飽き足らず、首筋や耳朶までお互いむさぼるようにキスを続けた。どのくらい時間が経ったかまるで覚えていない。
少し正気に戻ると、ここが薄暗いとはいえ、バーというかエスニック居酒屋のカウンターであることが少し羞恥心をおぼえさせた。 心なしかマスターが、こちらを気にして距離を置いているのがわかる。 彼女はまわりを全く気にしていなかった。
「ね、神山君好きな娘いるの?
「・・いまはいませんよ
「そっか、じゃあ安心した 好きなこがいたら悪いもんね こんなことするの でもしたいと思ったのよ素直に あなたがわたしのこと科学者みたいな目でわたしを描いてる時から
長い接吻のあとぼくはどうしようもない欲望にかられて恥ずかしいくらいに動揺していたが、彼女は物憂げに残りのモヒートをなめていた。
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