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中日新聞より。

2017年01月07日 23:18

『裏方の、さらに裏方の仕事』


安城市星野さん(三七)は大学卒業後、大手ゼネコンに入社し、総務部で事務職に就いた。
漠然とだが「ものづくり」に関わりたいというのが志望動機
だが、やりがいが見いだせず、辞めたいという思いが募っていた。
五年目のある日、星野さんは新入社員七人を引率して工事現場の見学に出掛けた。
生憎の雨で、気が進まないまま現場に到着。
すると、心中を見抜いたかのように作業所長のAさんが「雨の中、よく来たね」と笑顔で出迎えてくれた。
「ここは豪雨の際、住宅などの浸水被害を防ぐため、地下に排水路を掘る工事です」と説明を受けた後、作業服安全靴ヘルメットを身に着けた。
縦穴を下りると、そこは地上から極めて浅いところにあるトンネルだった。
JR近鉄の線路の真下を横断し、万一、ミスがあると鉄道の運行に影響が出てしまう難工事だった。
「緊張を伴うたいへんな仕事ですね」と言うと、Aさんが笑顔で答えてくれた。
「たいへんだからこそ、楽しいんだよ。難しいからこそ、 何事もなかったかのように終わらせるのが私たちの仕事なんだ」と。
星野さんは頭をガーンと殴られたような気がした。
「Aさんの仕事は、事故が起きないように工事全体の環境を整える『裏方』の現場監督です。目立たないけど、みんなが安心して暮らせるために、無事に終えて当たり前の仕事。長年、単身赴任で全国を渡り歩いてきたという姿が輝いて見えました。私の仕事は、その『裏方』のさらに『裏方』なのだと気付きました。以後、仕事に迷いが生じた時、Aさんの誇りに満ちた顔を思い出すようにしています」と星野さんは話す。

中日新聞掲載 2016年(平成28年)10月23日

このデジログへのコメント

  • バイクでつるんで緩く出かけたい 2017年01月08日 11:30

    福岡の地下鉄掘削事故も、可能な範囲で注意して起きた過失だと
    思います。
    安全確保は見えない努力の積み重ねで、私も日常生活や仕事で
    意識するようにしています。
    共感したので、コメントしました。

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