書籍:～戦国武将に学ぶ必勝のビジネス術～

～書籍紹介～
信長のM＆A、黒田官兵衛のビッグデータ
～戦国武将に学ぶ必勝のビジネス術～
吉田 龍司(著)

戦国武将の知恵は、現代のビジネスシーンに通じる「勝つための知恵」が満ち溢れています。
この本では現代の企業の戦略と戦国武将の戦略を関連づけながら解説されているので、非常に読み易いと思います。
特に参考になった話をご紹介していきます。

●武田信玄は戦国時代から、タックスヘイブンを取り入れていた
武田信玄の本拠地である甲斐という国は、古くから全国でも指折りの水害頻発エリアでした。
見上げれば富士山、八ヶ岳、南アルプスというお国柄です。
こうした地勢の関係上、河床の傾きが急だったり、流路が極端に変化する”暴れ川”が多かったのです。
信玄にとってはある意味、対立していた上杉謙信よりも恐ろしい敵といえるでしょう。
歴代の武田氏も水害には散々悩まされたそうです。
中でも、甲府盆地を流れる2つの川、御勅使川と釜無川が合流する竜王と呼ばれる地域は、深刻な被害を受けることが多かった。
信玄は、その地域に水防システムの一環として20年かけて堤防を築堤した。
更にはケヤキを植樹することで地盤強化しました。
でもこのようなシステムは作っただけでなく、維持も必要になります。
そこで信玄は、「タックスヘイブン」という思い切った手を打ったのです。
タックスヘイブンとは、租税がまったくないか、税率が著しく低い国や地域を指します。
イギリス領ケイマン諸島やモナコなどが有名ですね。
無税ということで世界中の大企業や富裕層を引き込むやり方です。
信玄は竜王地域に移った人の税を免除することで、水防システム信玄堤を守ったのです。
●勝つは負ける日の始め、負けるは勝つ日の初め、である。
自分がいつ勝者になるか、敗者になるか、明日のことはわからない。
株やFXといった金融マーケットのプレイヤーもそうなのだが、常に勝ち続けることなど不可能である。
栄華を誇った日本の家電メーカーでさえ今や風前の灯火だ。
結局、人も企業もほどほどの勝ちが一番良いのかもしれない。
信玄は6分か7分勝てればよく、8分の勝利は既に危険であり、九分十分の勝利は味方が大敗を喫する下地となると言っていました。
相手を徹底的にやりこめてしまえば必ずしこりが残ります。
人間関係に関しては特にそうですね。
●毛利元就はM＆Aで国を大きくした
毛利元就の名言です。
「1本の矢はたやすく折れる。しかし、3本束ねれば決して折れることはない」
毛利元就の領地安芸国の周りには、強力な超大手企業が2つ存在した。
周防の大内氏と出雲の尼子氏です。
毛利氏は、この2国に対抗するために、2本の矢をM＆Aしたのです。
山陰道・石見方面で「山」の吉川に加え、山陽道・瀬戸内方面の「海」の小早川という二大勢力を傘下にしたのです。
これが国を守るどころか急成長の足がかりにもなったのです。
●黒田官兵衛はとにかく派手な作戦、戦法で語られることが多い武将です。
例えば備中高松城(岡山県岡山市)で水攻めを進言したことなどはその最右翼でしょう。
勿論そうした奇策は、当代一流の作戦参謀だった官兵衛ならではの勲功です。
しかし、彼は基本的には理に合わない戦いは徹底して避ける人で、基本は調略、つまり交渉術で敵を誘降ろさせることを真骨頂としていました。
『戦わずして勝つ』
『孫子』の戦略でもありますが、こうすることで、相手に対して不用な反発を招かなくてすむのです。
兵・大将を皆殺しにして勝利したとしても、その後の征服地の内政はどうするか、恨みを持つ民を懐柔することができるのかといった問題が生じます。
ここまで配慮して作戦を立てる、さすが名参謀黒田官兵衛ですね