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オリーブ
2013年05月11日 01:13
アメリカ漫画の名作「ポパイ」に出てくるオリーブは何だか頼りない。
普段から、細いからだをくねくねさせて、力が抜けたような声で話していて、ブルートに連れ去られると、ただでさえ無力な感じがさらに際立ってしまう。
でも、実は彼女は自立した女性なのだ。無力だなんてとんでもない。だからこそ、ピンチな時以外はポパイを尻に敷けるのだ。
家事をしているシーンも多いが、オフィスで働いているシーンも結構ある。それも秘書など雇われではなくて、オフィスの窓に「公認速記者オリーブ・オイル事務所」などと専門職として一国一城の主だということを示すシーンもある。
彼女は実は1920年代にアメリカで増え始めた、大人になって結婚するためではなく、自立して働くために父母の家を出た若い女性の象徴なのだ。サザエさんが終戦直後の日本の最先端を行く女性だったのと同じように、オリーブは1929年に登場した頃には、時の流れの先頭を行く人だったのだ。
それはオリーブの針金のように細い体に表れている。欧米では伝統的に、魅力的な女性というものは、むちむち、ぽちゃぽちゃといった程度では済まず、豊穣の女神のようなたっぷんたっぷんの太めの女性だったのだが、その頃のアメリカで職業女性が登場したことによって、細くて胸の薄い女性が魅力的とされるようになったのそうだ。
そんな女性のイメージは、日本ならば大正デモクラシーから昭和初期の頃をイメージした、アールデコ的なレトロなデザインでよく見られるようのものだ。痩せていてぴったり目なワンピース着て、尖ったあごや鼻の顔の上に花飾りがついた帽子が乗ってる…というあれだ。
オリーブはまあ、そんなニューウェーブな女性が、これまでの世の中の常識をひっくり返してしまったことと、男性中心社会の中に出て行って生きる女性の危なっかしさを風刺するキャラだったんだと思う。それで、1920年代以前のセクシー観とは無縁な姿になっちゃったんだろうな。
でも、作者はそんなセクシーでも美人でもないオリーブが確実に好きだったと思う。特に、スポーツジムのシーンで出てくる「伝統的」でぽっちゃり、むちむちな美女は皆、金太郎飴のように全く同じに描かれている。(ぺティー・ブープを太らせたみたいで、僕は結構グロテスクだと思う。)何人いても、ポーズは一緒だし、早いうちいい婿さん欲しいという気持ちから出る、濃厚だけど画一的な媚びの言葉しか吐かない。
そんな旧世代セクシー美女たちは、バレエで言えば群舞、小学校の学芸会で言えば木みたいな、人格が薄い、背景のような描き方をされているが、オリーブは違う。かなり強い自我を持っていて、愛する男の前でもがんがん自己主張できる。口げんかに勝てば、ポパイを追い出すことだってできる。
美人じゃないけど、彼女はプリマなのだ。
21世紀に入ったアメリカでも南部の田舎では未だに「嫁さんが夫に服従しなくなったら、世の終わりだ」みたいなことをいう人が結構いる。
オリーブは80年以上も前にそんな考えにそっぽを向けた強い女なのだ。画期的なんて言葉じゃ済まない。革命的なのだ。彼女が今でも愛される理由はそこにあるのだろう。(まあ、そんな強さと、ピンチの時の無力さのギャップが魅力なのかも知れないけど…)
このデジログへのコメント
オリーブは結構、強くて自立した女性
嫌なことは嫌だと言い通す
そんなオリーブを受け入れるポパイも新世代
初期ではポパイが海軍、ブルートが陸軍という設定だったけど、いつ頃からか二人とも海軍に…
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