マートンイチロー超えた！

阪神のマートン、球史に名を刻む＝敵地のファンも祝福－プロ野球

　敵地の神宮球場でも、ひときわ大きい左翼席からの声援を背に受けて、阪神のマートンがイチローの記録を塗り替えた。
　二回、ヤクルトの先発中沢が３点を失った後、なおも２死満塁で打席に入った。「いろいろ考えずに集中できた」。落ち着いて２球続けて変化球を見送ると、３球目の高めに浮いたチェンジアップを見逃さなかった。打球は中前へ転がっていき、シーズン通算２１１本目の安打は２点適時打。一塁で祝福の花束を受け取ると、左手を上げて声援に応えた。
　打線もこれで勢いがついた。続く新井が適時打、金本の１６号３ランも出て、この回一挙９点。ポストシーズンもにらみながら、巨人と２位を争う中で、マートンが頼もしい働きを見せた。
　大記録を達成し、二回の右翼の守備に就くときには、ヤクルトファンからも拍手で迎えられた。大リーグでも将来を期待された選手だが、今では日本を選んだことが「自分にとって素晴らしい機会になった」と言う。「個人の記録でも、一人では残せなかった。みなさんに感謝したい」と語るきまじめさも、日本になじんだ一因だろう。
　イチローは１３０試合での２１０安打だったが、来日１年目で到達した前人未到の数字は色あせない。この日はさらに２安打を放って２１３安打。残り２試合も、「瞬間瞬間で、ベストを尽くす」とマートン。日本のプロ野球の歴史とファンの心に、その名がしっかりと刻まれた。（2010/10/05-22:50）