しちゅうー

今日の晩御飯、メインメニューはシチュー。
シチューは私が世界一、好きな料理です。
あのとろとろ感、甘いようでもあり辛いようでもあり、それでいて飽きない、具でも大活躍、口のなかを跳梁跋扈。
豆腐の次に好きな料理です。

シチューは家庭的なイメージがあります。タロットカードでシチューが出れば、それは『マザー』の暗示です。そのくらいの安心感と安定感。
いきなりですが、最近の子供は夢がありません。私は子供の頃、シチューになりたかった。安定してるから。

そんなことはどうでもいい。本当に、どうでもいい。
シチューの話です。
シチューがあれば、人生のピンチも、ほとんど乗り切れます。

どん、どん、どん！
「おい！おい！いるのはわかってんだよ！」
「お、おとうちゃん･･･また借金取りの人が来たよ･･･」
「しーっ、キョウコ、静かにしなさい！ばれちゃうでしょ！」
「おいコラ、とっとと出てこねえと、ドアぶち破るぞ！」
どん、ぎぎっ、どん、どん！
「金なんか無いのに･･･もう心中しか･･･」
「あんた！変なこと言わないで！諦めちゃダメよ！」
「こわいよー、おとうちゃーん」

どかーん！

「おらー、どこに隠れてやがるんだ！？」
「お、おとうちゃん、おかあちゃん！ドア壊されちゃったよ！」
「･･･母さん･･･キョウコを連れて逃げなさい」
「あ、あなた、まさか･･･！」
「おっ、やっぱりいたじゃねえか･･･！」
「はやく逃げなさい！」
「おっと、逃がしゃしねえぞ！女には金を作ってもらわなきゃいけないからなあ」
「や、やめてくれ、嫁と娘は･･･」
「うるせえ！」
「おとうちゃーん！」
「ん･･･！なんか良い匂いがするじゃねえか･･･何の匂いだ････？」
「シ、シチューですが･･･」
「何だと！シチューか！はやく持ってきやがれ！」
「は、はい･･･」

ぱくぱく、ぱくぱく。

「うめえじゃねえか、じゃあ、今日のところは帰らせてもらうぜ！」
「あ、ありがとうございます！」
「おう、借金のことは、もういいぜ、じゃあな！嫁さんと娘を大切にするんだぞ！」

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こうなるに決まっています。すべてはシチューのおかげです。
すごいぞシチュー。