anagram

こころのうちではきっぱりと
訣別をしたつもりなに、

いつの間にか陥った
浅い眠りの中で
また、いつもどおり
あれやこれや
順をいれかえただけの
イメージのアナグラムが始まる

夢ならばそれを逆手に
なにをやってもおとがめはなし、と、
未練がましくもあれやこれやと繰り返し
はなしかけるまではいいものの、

意識下でのせいよくの
欠落した状態とはうらはらに

くちづけ、
かみ、かぢり
おしひらき
舌をはわせ
舌を吸い
挿入し
律動し
あえがせ
あえぎ、

あらんかぎりの熱意をこめて
性交している

その脂汗を滲ませる
ながい
ながい
ながい
コイトス

けれどいくら何をたずねようと
ただのひとつも
言葉が帰ってこないことに
どうしようもない、いらだちを隠せず
ならばお互いの正体を
明かさなくてはならない

キミは夢であり
ボクはその
幻を相手に
セックスをしている
ただそれだけだ、ということ。

夜は既に明けていて

目の前に
煌々と二つのライトが照らす
19インチの液晶内の
デスクトップを埋め尽くすように
ファイル･フォルダが、とっちらかっている

ならばせめて
ドキュメントを片付けようと
整理を始めて間もなくのこと
突如として開かれてしまう
一枚の写真

たまたま居合わせた
見知らぬ若い旅人に
シャッターを任せ

逆光の中で
たたずんでいる二人の背景には
誰もが知る、
京都の古寺の広い舞台

写真嫌いのボクが
たった一枚
好きだと告げた
誰も知らない
二人だけの
夏の微笑み


もう、こんなゲームは
終わりにしてくれないか

愛なんてこれっぽっちも
いらないからさ