- 名前
- nomiya8
- 性別
- ♂
- 年齢
- 80歳
- 住所
- 埼玉
- 自己紹介
- 気持も若い積りだし、身体もそうだと思ってましたが先日忘年会でボーリングをした時、運動...
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今何処(いずこ)-PE編-3/3(続)
2007年05月12日 11:32
「久し振りですね、元気ですか」本当はもっと自分の感情を声にしたかったが部屋には上司も同僚も何人か居て、相手が女性である事を気付かれたくなかったので、久し振りの友人からの電話を装った。「元気です。でもMさんに会いたいです。何時来られますか。早く来て下さい・・・。私日本語が沢山上手じゃないですから私のお姉さんは英語が上手です。今お姉さんと代わります」そう言うや否や彼女は受話器を傍に居るらしい人に渡している様だった。今まで一度も彼女にお姉さんが居る話は聞かされた事は無いし、そのお姉さんとやらと今度は英語で話さなければならないとなると困惑した。同室のスタッフは程度こそあれ殆どが英語は話せるし、今まで日本語で話していて誰か国内の知人と話している事を想定してたのに、何故その電話で今度は英語なのか。私は周囲に対する気兼ねがあったが、もう如何しようもなかった「ハロー、私はXXXXですが、妹がどうしても貴方に気持ちを伝えたいと私に頼みました」「はい、彼女の気持ちは本当に嬉しいし解っています。もう少ししたら会う事が出来ると思いますので待っていて下さい」「彼女は本当に貴方を好きです。時々泣いて貴方の事を話します」
「解っています。私も早く会いたいです」その時点ではもう周囲の事はさほど気にならなくなっていた。そして電話は彼女に代わり「Mさん本当に会いたいです。早く来て下さい」「もう少し待って、直ぐ似合えるから」未だ私が近々韓国に出張する話など聞かされていなかったが、それしかその場では言いようがなかった。少し同じ様な会話が続き、漸く電話が切れた。
私は直ぐにその場を離れトイレに行った。別段もようした訳ではないが、周囲の者と目を合わせたくなかった。
その後一週間もしない内に彼女から会社に手紙が届いた。文頭には日本語で少し書いてあり、そこからはハングル文字で長々と書かれてあった。無論私はハングルは読めないし、彼女もそれは知っている筈だったが、彼女にしてみれば自国語のハングルでないと自分の本当に言いたい事が表現できなかったからだと思った。内容は解らないが十分に彼女の意は理解できた。そして最後に日本語で連絡の為の電話番号が変わった事が書かれてあった。
それから数ヶ月して、韓国のメーカーで一寸した問題があり、急遽出張を言われた。私は直ぐに彼女に会えと言う思いと同時に、その問題を如何対処するかも私の頭の中を重く支配した。
私は直ぐに準備し韓国へ向かった。私が暫く行かなかった間に宿泊ホテルは街中のホテルに変わっていた。部屋に入りバッグの中を見たら、以前彼女から送られてきた手紙が見当たらない。財布の中を見ても昔の電話番号が書かれたメモしかない。
日本で慌ただしく出張準備をした時を思い返したが、心当たりはなかった。彼女とは何時も街中へ出て食事してたが、一人では出ての食事は言葉の点で不便なのでホテルのレストランで食事を済ませた。ベッドに入ったがなかなか寝付けなく、彼女の事が走馬灯の様に頭の中を駆け巡り、明日は仕事が忙しいので早く寝なくてはと思いつつも寝付くまでかなりかかった。
その後3,4ヵ月後、再び出張が巡ってきた。今度は急でもなく、しっかりと彼女の手紙を携え韓国へ向かった。ホテルは前回と同じ、部屋に入るや否や受話器を手に、手紙に書いてある番号を回した。呼び音が何度かなっている。久し振りに会える彼女に対しての心の高まりが自分でも解る程、心臓がドキドキしていた。韓国語で「もしもしXXXX」私は日本人である事を先に伝え「PEさんは居ますか」と下手な韓国語で尋ねると「XXXXX????」訳の解らない韓国語が返ってきた。私が下手でも韓国語を話したので解るのかと思ったのか「私は日本人で韓国語は解らない。PEさんと言う女性は居るか」と再度話すと「一寸待って」と言い他の女性と代わった。今度は流暢な日本語で「済みませんが、そちらにPEさんと言う方は居られますか」と尋ねると「その人は少し前に辞めました」とある程度年配の女性と思われる擦れた声で言われた。その時そこが彼女の住まいではなく、何処かの店のようで、その女性の感じから風俗的な感じを受けた。私は彼女との連絡手段が閉ざされた失望感と、彼女がその様な所で働かなければならなかった事への、何とも言えぬ寂しい、空しい思いが私を襲った。
そしてそれまでの彼女と一緒だった時の光景が、次から次へとやりきれない思いと共に思い出され辛かった。
完
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