今何処(いずこ)-PE編-2/3

タバコが短くなり灰皿で揉み消し終えて少しして彼女はバスルームから出てきた。「済みませんでした」との彼女の声で振り向くと胸までバスタオルで覆っていた。「じゃ入ってくるから待ってて」と言い残し、少し湯気が漂うバスルームに入りドアーを閉めた。終わって腰にバスタオルを巻きつけバスルームを出ると、彼女は既にベッドの中で顔だけ出して私を見つめていた。私は彼女の寝ている反対側に行き、シーツを少しあけて、彼女に背を向けた格好でベッドに腰を下ろし、巻いていたバスタオルを取り、足からベッドに滑り込ませた。流石に初対面の彼女に素っ裸で向き合う勇気は無かった。
私は彼女の首の下に右腕を差込み、時折彼女の顔は見ながら暫く取り留めの無い話をしてた。暫くして何の話をしていたか覚えていないが、彼女がはにかみながら笑った時、私は体を反転し、彼女に覆いかぶさる様にして彼女の目を見つめ、次第に唇を近づけそして重ねた。
ジリジリジン、ジリジリジンと何かの音が。気が付くと部屋の電話が鳴った。眠気眼でベッドから出て受話器を取ると「お早うございます、お客さん７時です」昨夜寝る前に頼んだモーニングールだった。相手の会社からの迎えは８時半頃だから未だ時間の余裕は会った。私は再びベッドに戻り彼女の唇に私のを軽く重ね合わせた。彼女は未だ眠そうな声で「Ｍさん、今何時ですか」「７時だけど少し時間があるから」・・・・
ベッドから出たのは８時少し前だった。直ぐに新しい下着とＹシャツで身支度し終えた。彼女は未だ半分寝ているような感じだった。「もう出なくちゃいけないんだけど、貴女は如何する、このまま未だ寝ている」彼女は少し身を起こすと「あの・・・、恥ずかしいですけど・・・、お金」と下を向きながら口ごもる様に言った。「幾らですか」「解らない」「私も初めてで幾らか解らないから言って」・・・・「５０ドル、いいですか？」日本円で１８，０００円だ、一寸高いかなと思ったが、これきりだからいいかと思い「じゃねこれで」といってポケットから出して渡した。「有難う」「じゃ私は出て行くけれど、出る時は鍵を持ってドアーを閉めて出て行ってね」と言い
彼女の額に軽く唇を当てて部屋を後にした。

一通り仕事を終えると相手の会社の専務と営業部長が「一寸一緒に食事でもしませんか。私が一寸遠慮して返事をしかねていると「別に用事は無いんでしょう」私が「まあ」と言いながら軽く頷くと「じゃ一緒に食事しましょう。一寸用意しますから一寸待ってて下さい」そして会社の車で町に出て食事し、少し酒も飲んだ。終わったのが６時半頃、その車でホテルまで送ってもらい部屋に戻ったのが７時頃だった。私はコートと上着をハンガーに掛け、ネクタイを外し手を洗うのと嗽をするためバスルームに向かった。ドアーを開けてびっくりした。そこには幾つかのハンガーに昨夜縫いでクロゼットの隅っこに丸めてあった上下の下着、Ｙシャツ、靴下、ハンカチが所狭しと干してあった。それは彼女がしてくれた事は明白だ、ホテルのメイドではそこまではしない。私は彼女に「有難う」とお礼が言いたかったが彼女への連絡先は聞いていなかった。
如何したら彼女に連絡が取れるだろうか、そして言いたかった「有難う」と。手を荒い嗽を済ませ部屋に戻り、椅子に腰掛けてタバコを吸いながら思案していた。
すると傍の電話が鳴った。びくっとしたが直ぐに直感的に彼女ではないかと思い急いで受話器を取った。「Ｍさん、今帰りましたか」「うん、有難う・・、びっくりしたよ、本当に有難うね」「Ｍさん私これから行っても良いですか」「うん、良いよ来て、どの位かかる」「うん・・２０分位です」「じゃ待っているから直ぐに来て」。
私は今まで心に充満していた感動と、連絡が取れた嬉しさと、そうしてくれた彼女に対するいとおしさが込み上げ、落ち着かずそわそわした短い様で長い数十分だった。
コンコン、ドアーが軽くノックされて、急いでドアーを開けると昨日の彼女が目の前にいた。私は彼女を招き入れ、ドアーを閉めると彼女を引き寄せ抱きしめた。「有難う、嬉しかったよ」そう言って彼女を離し、手を繋ぎそのままにしてあったバスルームへ連れて行った。
3/3へ続く