タカラモノ

目先のワタシは決して不幸ではなくて。

ここ数年間、ずっと探していたものを手に入れたかのようで。

手の中に振り落ちてきた、キラキラとしたものを

確かめるように、逃がさないように、ギュッと握る。

その手の中には、何かがあることが感じられて、

嬉しくて、指の隙間から何度も何度ものぞいてみたりする。


振り返るな、振り返るな。

余所見をしていたら、手のひらから溢してしまうよ。

はじめて汲んだ水を大切に運ぶ子供のように、それは真剣に。

懸命に前だけを向いてきた。

ワタシを導くひとは優しくて。

迷わないように、うろたえないように、足元を照らしてくれる。


少し平たんな場所に立ってみたら、そっと過去を顧みたくなった。

誰にもどこにも触れることなく、見るだけならいいよね？

ワタシが歩いてきた後ろには足跡が続いていて、

その足跡を消してしまったら、ワタシがワタシで無くなる気がするの。

これまでの自分もこれからの自分もワタシはワタシ。

迷わないように、ずっと手を握っていて。

今ならきっと、今を見失わないで見れる気がするよ。


振り返ってみた先にあったものは。

決して、過去のワタシも不幸ではなかったという事実。

見えない未来に苦しんで、傷つけて、傷ついて、後悔したけれど。

自ら手放した自分を呪って罵って、憾んだけれど。

あんなにひとを愛せて良かった。

あんなにひとに愛されて良かった。


100のラヴソングに自分を重ねてみたり。

行き場のない想いを泣きながらしたためてみたりした。

けれど、それも全てワタシの恋だったのだから。

その恋はワタシのタカラモノなのだと言える。

タカラモノを持っているから、今のワタシが在って。

今のワタシが居るから今の恋が出来る。



気の利いたことは言えないけれど

キミのためなら何でもできる


ラヴソングのようにハッピーエンドではなかったけれど。

そう言ってくれたひとが居たことは紛れもないタカラモノ。


https://www.youtube.com/watch?v=DhT-8V8o0aI