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ダージリン

2006年01月24日 21:14

「いらっしゃいませ。」

二人でカフェに入ると顔なじみのマスターが出迎えてくれた。お昼も過ぎていたので店内は読書に熱心な男性が一人と、カップルが一組だけだった。

カウンターでいい?」
いつもカウンターにすわる私はT君に聞いた。
「おう。」
二人でカウンターのちょうど真ん中辺りの席に腰を下ろす。

マスターが腰を下ろして落ち着くのをまっていたようないいタイミングでお冷とメニューをもってきてくれた。

「T君、何にする?」
「そうだな・・。寒かったからな。あったかい奴がいいな。」
真剣な顔をしてメニューをみている。
反対に私はいつも飲むものが決まっているので、T君の顔を真剣にみていた(笑)。

「おし、決まり。あやのは?」
「私はいつもと同じのだから。ね、マスター。」
そういうとマスターはにっこりして
あやのさんがいつもと同じものを頼まないときは何かあった証拠なんですよ。」
と、T君に教えるように言う。

「俺はホットのダージリンで。」
「私はいつもので。」

「かしこまりました。」
マスターがこちらに背をむけて準備をしていると、T君は不意にこういった。
「不思議だよな、俺ら。」
「どうして?」
「ついこの前までは、他人同士で何にも知らなかったのに、いまこうやって並んではなしてるんだぜ。まぁ、携帯を拾ってもらったときも二人でお茶のんだけどな。」
「言われてみればそうだね。」
何だか嬉しそうに話してくれるT君。
その顔を見ていると心がぽっとあったかくなった。

「何かの縁・・・・かもな。ん、ちとトイレ。」
さっと席を立ってT君はトイレに行った。

私が一人になるとマスターがこちらを向いた。
彼氏?」
「違いますよ。この前偶然、彼が落とした携帯を私が拾って届けたんです。それがきっかけです。お友達ですよ。」
「でも、ダージリンを注文するとはびっくりしました。
「私も。」

実は私は数年前付き合っていた彼ともいつもこのカフェでお茶をしてはいろいろなことを話していた。その彼は冬でも夏でもホットのダージリンしか頼まなかった。マスターはそのことを思い出して言ったのだった。もちろん、すでに別れてしまったことも知っている。

「久しぶりにあやのさんらしい笑顔をみてる気がしますよ。」
「え?」
「前の彼と別れたあと、いつも物憂げな感じでしたので・・。」

確かにそうかも・・・
あの彼と別れたあと、あんまり笑わなくなっていた気がする。何をするにも彼を思い出してはため息ばかりついていた。
でも今はこうやって笑っていられる。


「新しい恋の始まりかもしれませんね。」

マスターがダージリンの入った缶を手に取りながらいった。


「そうですね。」
と、私はつぶやくように答えた。

このウラログへのコメント

  • ゆう 2006年01月25日 00:16

    う~ん!
    続きが楽しみ

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