バレンタイン・デー

週末に彼女の家に行った
日曜日は、バレンタインチョコを
買いに行きたいという彼女の希望で
新宿のデパートに行く

「今日はお互いのプレゼント用のチョコを買うの、いい？」

俺に渡す分だけでなく
俺にもチョコを買って欲しいという
彼女は何よりもチョコが大好きだ

自分で買って食べるだけでなく
プレゼントされたチョコの方が美味しいそうだ

デパートのバレンタイン用の催事売り場は
大賑わいだ

「目移りしちゃうね～、こんなに色んなチョコがあると」
「季節限定商品や、世界のショコラティエの限定品もある～♪」

俺からしてみると
普段、デパ地下で売っているものと
見分けがつかないんだけど
マニアには、堪らない品々が
バレンタインフェアの売り場にはあるらしい


俺が彼女に買ってあげたのは
パリのショコラティエの商品
日本限定の桜フレーバーのハート型ガナッシュなど
９種類のアソート

俺が彼女に買って貰ったのは
ベルギーのショコラティエの商品
飛行船でカカオ探しの旅をイメージした
ゆずと抹茶、コーヒーとカルダモンの４種類のアソート

他にも彼女は
自分用に少し買い物をしていた
ここで買っておかないと
一年間、後悔するらしい



「お茶したいなぁ」
「パンケーキ食べたい♪」


はいはい。
お嬢様のために調べておきましたよ

俺は調べてあったパンケーキの店に
彼女を案内する

人気店なので椅子に座って少し待つ

でも彼女は気にしない
美味しいものを食べるために待つことは
苦にならないらしい


席に案内され
二人で同じ定番のパンケーキを頼む

俺はダージリンのストレートティー
彼女はアッサム
パンケーキを食べる時はアッサムと
決めているらしい

俺にはそんなこだわりはないけど
香りが好きなのでダージリンをよく飲んでいる


いよいよお待たせのパンケーキの登場だ

彼女はインスタ用の写真をまず撮って
それから一口、パンケーキを口に入れる

「美味しい～♪」

本当に幸せそうな顔をしている

俺も一口食べてみる

うん、美味い
フワフワでとろけそうな焼き加減
絶妙だな

「美味しい？」

うん、美味しいよ
君と食べるパンケーキは最高だね

「上手なんだから」

本当のことだよ

「ねぇ、少し私に食べさせて♪」

うん、いいよ
俺は、俺の皿のパンケーキを少し切って
フォークで彼女の口に運んだ

彼女は少し恥ずかしそうに
そのパンケーキを口に頬張る

「さっき食べたのより美味しい。なんでかな？」

なんでだろうね。愛情のエッセンスがあるからかな？

「もう、気障なんだから」

彼女はそう言って笑った。

あぁ、最高の笑顔だな
俺はいつまでも、その笑顔を守りたいと
そう思った。


（Fin）