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「めぐりあい」第七話 京都で逢う

2024年10月07日 06:22

「めぐりあい」第七話 京都で逢う

「モトコに逢いたい。京都タワーの展望台で。俺ではダメかな?」

そう書いてあったハルからのメールには、俺がはるだとは書いてへんかった

「俺ではダメかな?」

その言葉は、ハルははるでないという意味にも取れたし、君とは一度別れたけど今の俺ではダメかな?という意味にも思えた

それは私の希望的な推測やったかもしれんけど・・・


ハルと週末の土曜日の10時、京都タワーの展望台で逢う約束をした
息子も連れて行ってええかと聞いたら、もちろんいいよ、との返事があった


息子には、たまには京都に泊りで行こか?と言って、週末の京都旅行に連れ出した。友達にも会うんだとも告げていた

お友達かぁ。オトンの知り合いか?」
「いゃ、おとんの知り合いやないなぁ」

土曜日はおかんの好きな寺社巡りに付き合って貰う代わりに、日曜日は大阪のUSJに連れていくことにした


悟は妙に察しが良いというか、もう、おかんと二人の生活になることを理解しているかのような感じもする。だから、我儘は控えなきゃあかん、男の子やからおかんを守らなあかんと思っとるんかもしれん

これは母親の欲目かもしれん。本当は甘えたいけど少し遠慮しとるだけかもしれん
だけど、母親息子だけの生活を岡山で8カ月過ごして、逞しくなっとるんは確かや


岡山駅から京都駅まではのぞみで1時間。あっという間や

悟は新幹線大好きやから、もっと乗っていたそうやった。京都駅を降りたら京都タワーは直ぐ目の前や
大学生活4年間とその後の最初の職場合わせると10年間を過ごした京都の街。懐かしくて、はるとの思い出もあって少し胸が痛むようなところもある、大好きで忘れられん街に息子と降り立った


悟と手を繋いで京都駅の改札を出て京都タワーへと向かう。最近はあんまり手を繋ぐことも無くなってきたけど、悟もあんまり知らん街で知らん人に会うんが少し心細いのか、手を繋ごうというとすんなり握り返してくれた

いつまで悟と手を繋くことが出来るんかな。今が幸せな時かもしれんな

そんなことも考えながら、ハルが待つ京都タワーの展望台へと、ハルに逢うのに不安な気持ちを抱えて、二人でエレベーターに乗った



京都タワーの展望台のフロアーでハルを探す。私が悟を連れてきていることと、服装も伝えてある。オープンして直ぐの展望台はそれほど人はいない


私の心臓は早まり、ドキドキと胸で高鳴っている・・


ハルの服装もメールで聞いている。ベージュコートに、ワイン色のセーターにジーンズ・・



あっ、おった!


手を挙げて近づいてくる・・・ 

ちょっと老けた感じもするけどやっぱりはるや!

「久しぶり」
「久しぶりやね」

懐かしい声。懐かしいちょっとはにかむような笑顔

「悟くんかな。初めまして、はるです。お母さんとは大学の時の友達なんだ」

腰を屈めて悟にも挨拶してくれる
悟も恥ずかしがりながらも挨拶をしてくれる


愛知県出身のはるは、こてこての名古屋弁を話す訳でもなく、言葉だけ聞いとると、何処の出身の人かはよう分からんとこがある

大学生の時もそうやった。今も話し方、アクセントとかは当時と変わらん感じがする
私が話す関西弁をよう面白がっとったな

昔のことをちょっと思い出してしまう

「悟くんは、今、小学校は何年生なの?」
「2年生です」
「そうか。何か、スポーツとかやってるの?」
サッカーをやっとるよ」
「ほう、いいなぁ。おじさんは子供の時は野球やったなぁ」



展望台のフロアーを回りながら、はるは気を使っているのか、時々悟に話しかけてくれる

悟も関西弁と、最近覚えだした岡山弁を、緊張しとるのか少し抑え気味で話しとるんが、ちょっと笑える感じや

私が妄想しとった、はると悟と私。その三人の取り合わせでこうして一緒に逢って歩いて話しとるんは、なんか不思議な気がするなぁ


悟の前やから話すことは限られるけど、ぽつぽつと昔話をしながら、展望台を一周して、それから青蓮院清水寺などがある東山に向かうことにした


京都駅から地下鉄烏丸線に乗り烏丸御池東西線に乗り換えて東山駅で降りたら青蓮院までは歩いて直ぐや


(つづく)

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