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茶の味 ; 見た映画 Apr. ’06 (3)

2006年04月15日 07:06

茶の味 


製作年 : 2003年

配給 :クロックワークス、レントラックジャパン

原作・監督・脚本・編集石井克人

出演:坂野真弥
    佐藤貴広
    浅野忠信
    手塚理美
    我修院達也
    三浦友和
    土屋アンナ


妙な映画だ。 というのは、ヘンなといってもいいかもしれないけれど、郷愁と現在の屈託、それに私が嫌う「癒し」と言う言葉への傾斜が見られるからだ。 生煮えのオジヤを喰わされたような感じだ。 まずいと言うのではない。 食材は近頃稀に見る新鮮な様々なものだ。 例えば、失われていく大家族とはいわなくとも核家族プラスアルファで7人、それぞれの屈託が訳が分からないうちに画面に現れていく。 変わった家族、といった調子だ。 家族の奇妙な立ち振る舞いに何かと戸惑うだろう。 それに出演者たちの互いの関係が分からぬままに、ジグソーパズルを組み立てていくようにはじまって、徐々に部分相互の関連が露になる仕組みである。 

半分頭が呆けているのか怪態な言動の爺さんが、けれど充分家庭内では機能しているのだけど、いるのかと思えばその人も含めてそれぞれがすこしづつ世間からずれたように思えるときがある。 特徴的なのはこの家族には団欒の部分ではテレビが欠落していることだ。 戦後テレビが家庭の団欒を破壊していることは明白で、70年代からのテレビのホームドラマのなかで繰り返し見せられた似非茶の間の団欒をみよ。 あれが奪った家族構成員間のコミュニケーションの結果を。 ここでは戦前の家庭の雰囲気を示すようでもあるのだが、あくまでゆったりとしたなごやかな家庭ではあるように見える。 しかし、普通の家庭科かといえばそうではなく、現代的なマスコミメディアと深く繋がっている事は歴然としてくる。 

この映画で一番成功しているのは、というより主役は、この家庭の置かれている土地環境だろう。 往々にして家庭ドラマでは都会の中の住宅地とか新興住宅地舞台になりがちなのだがここではまるで黒澤の「八月の狂詩曲」の田舎の家の風情である。 黒澤の映画では都会から帰省する家族が老母の守る田舎として登場するのだが、ここではこの家族がここでしっかりと生活している。 けれど、収入の源は嫁のアニメの仕事、町の診療所整体術を施し電車通勤する夫であり、農家ではないしこの村か町か判然としない土地にかかわる商店でもない。 

黒澤の例を引いたのは、この映画のさまざまなところで示されるCG意図と効果についても類似がありそうだったからだ。 黒澤の「八月、、、」では話の中心となる、原爆ピカドン、のイメージ、雲間にあらわれる異様に大きな目、はCGで表現され、それが人間を俯瞰する。 この映画でもそのような仕組みになっていて黒澤の映像と同様に違和感をもたらすのである。

夫の弟で家でぶらぶらする男がいるが、この男にしてもメディアに生息するミキサーという肩書きを持っている。 その下には家に住まず町で生活する漫画家のいかにもカリカチュアとして描かれる男もいる。 そういう意味では監督のうちわに近い材料でもあるが、なによりもここでこの世界に拮抗する大きな力となるのは田舎の風景であろう。

ここでも桜の満開の林が示されるし、主に春の花々が美しくしめされる。 各シーンが印象深い。 それは浅野忠信出演の「水の女」でも幾つかの印象深いシーンがあったが、ここではこの家が置かれている周りの風景を丁寧に撮っていることから。まるで自然に抱かれて「癒され」ているというようなメッセージを示しているかのようでもある。 つまり、ここでは都会の喧騒は家族の崩壊、軋轢をもたらしがちで、こういった環境ではまだ、人はノスタルジックに生活することが出来る、といでもいうような安易なメッセージに導くかのようでもあるのだが、そこのところは簡単ではないようだ。

それぞれ、うちがわに何か持つような構成員なのだが、この映画の各所で思わずユーモアに知らずにやにや笑い、噴出してしまうような会話があるのだし、いわゆるしゃれたエピソードにも事欠かないのだ。

いずれにせよ、一番印象的なのはこの家族のもっとも普通にみえる、せりふにしてもなんの変哲もない三浦友和の父親である。 屈託を胸に日々の生活を送る現代の父親像が周りの人物の色彩の対照から浮かび上がってくる。

映像の美しさは特別である。 更に、DVD付録の冊子にカラースチール写真があり美しいものだが映画の映像以上にこのうちのたたずまいを現実的に示すものである。 写真とライトに調整された動画の違いがはっきりと見るものにはわかるようである。

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