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冬の彼方へーーーエピローグ9

2015年04月20日 22:44

美紅は咲紀以外には悟られないよう店を出た…つもりだった。
駅までの道のりをゆっくりと歩く…。
今日は最終的には疲れてしまったな…と考えながら…。

もうすぐ駅というところで急に美紅は腕を掴まれた気がして振り向くと、
そこには神崎が息を切らしてたたずんで居た…
美紅の姿が見えなくなったのを素早く察して追いかけてきたのだった。

「神崎君、どうして…?何かあった…?」
「何かあったのは美紅さんの方じゃないの…?
こんなに早く、しかも何も言わずに帰るなんて…
何で…?」
「何でって…ちょっと今日は疲れちゃったし、皆の雰囲気壊したくなかったからだよ…
わざわざそれを聞きに走って来たの…?
言わずにお店出たことは謝るわ、ごめんね」
美紅はそこまで言うと再び胸やけを感じ思わず、うっと口を押さえた。
「それに胸やけもしちゃって…私らしくないでしょ…」

そう言うや否や、美紅は神崎に身体を抱きしめられた…。
何も言わず…きつく抱かれた為息苦しくなって…
「…苦しいよ…どうかしたの…?
いつもの神崎君らしくないよ…」
美紅は神崎の手をそっとほどくと、その後さすがにしんどさに見舞われ、
その場にしゃがみこんでしまった…。
「ごめん…どうかしてるね、俺…
何かすごく不安になって…聞かずにいられなかった…
最近いつもの美紅さんらしくない気がしてしまって…」

美紅は覚悟を決めなければならないような気がした…
これ以上神崎に隠していてはいけない、そう感じた。

「神崎君…実は黙っていたけど…
まだ誰にも言わないで欲しいの…
私、妊娠したんだ…だから…」

神崎は一瞬息を飲んだようだった…そして言う…
「…美紅さん…それって…俺の…」
「ううん、違う。私、夫とはもうレスじゃなくなって。
だから神崎君じゃないよ…でも私も悪いよね…
神崎君とも関係を持ってしまったから…
ごめん…余計なこと気にさせちゃって…
だからしばらくこの事は内緒にして欲しい…
妊娠した事、時期が来たら皆にも言うつもり…」

「ごめん…」
神崎は一言だけ言うとそれ以上の言葉が見つからなかった…。
そんな神崎におやすみ、お疲れさま…とだけ言い残すと
美紅は一人駅の改札へと向かう…。

月明かりが青白く光る夜であった…。

このウラログへのコメント

  • けろ 2015年04月21日 02:14

    神崎を何故に逃がしてしまうの?苦しめないと。いい思いだけさせて。一人で苦しむの?

  • ジョシュア 2015年04月21日 08:04

    美紅は身ごもりましたが母になる覚悟が出来た…
    いい思いは美紅もまたしたんですよね…
    苦しみはなく喜びがある…責める気持ちにはならないのでしょう…

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