冬の彼方へーーーエピローグ10

神崎は店へ戻った。
それに気づいたのは咲紀だった。
他の者はてっきりトイレだろう位の程度に思ったに違いない。
何しろ皆酒好きというのか盛り上がっていた為他の事に構う雰囲気でもないようだった。

咲紀は見逃さなかった。神崎の表情が硬くなって戻って来たことを…
そしてタイミング的に美紅を追って店を出ていたのではと察した。
神崎と美紅の間に何があったのだろう…
神崎が追いかけるなんて余程のことだ…

そして神崎はそろそろ帰ると言い出した。
咲紀ももう時間的にはけようと思っていた矢先だ。
「課長、私もそろそろおいとましてもいいですか？
明日もあるし電車の本数もう少ないので…」
「ん？咲紀ちゃん。そうだね…女の子はもう早く帰らないとね…
あれ？いつの間に美紅ちゃんもいないのか…
仕方ないね、じゃあ神崎に駅まで付き添ってもらって。
お疲れさん、気をつけて帰るんだよ」
成田は言って二人を見送ったのだった。