悲しき浮気者・・・

自分も浮気していたとしても

御主人の浮気は許せない

わたしには　もう麻痺しちゃった感覚

麻痺してるからなのか

それって　すごい身勝手な話な気がする


今年早々に訪ねてきた美弥さん

それと三夜目の芋川さん

たださ、なんで同じような話が・・・

立て続けに舞い込んでくるかな・・・

電話が鳴る　出る　田中さんの声が響く

「やがみさん　ひさしぶり　今日御主人いる？いる、じゃあ今から行く」

何かあったな・・・

わかりやすい人だ・・・

「あのさ　田中さんが来るらしい・・・」

「ん、何しに？」

「多分　ちあきと浮気しに・・・」

「へっ？」

「多分　そうだと思う」

「うーん、ま、いっか」

いいのか・・・？

でも、まあ　ひさしぶりに田中さんに会えるし

だけど　なんで　浮気なんかしにくるんだろ？

「旦那が浮気でもしたんじゃないかな？」

「そうなの　でも　浮気はしないとか言ってた気が」

「人の意思は色あせるものだから」

「そうだよね　あなたもそうなの？」

「そうだと思う？」

「わからないけど　あなたの場合　ご飯も女性も同じだから」

「多分　それが正解」

うん　この人は好きな食べ物は飽きることがない

３ヶ月毎日残業食カツカレーで平気な人だし

カレーでも作ったら　半月以上全食カレーで平気だし

こういうとこから　特殊な感覚の持ち主だし


田中さん　すごい剣幕で愚痴を言いまくる

でも　この人　やっぱり　旦那さん大好きな人だ

泣きながら　旦那の浮気の愚痴を言ってるし

「だから　わたしだって　頑張ってるんだよ」

ちあきが田中さんの髪に触れる

「髪　また伸びたんだね」

「御主人　　わたしは」

泣き崩れる田中さんに

そっとキスをする　ちあき


「ゆうこ　今回は見ない方がいいかも」

「えっ、あ、そっか・・・」

「見てて」

「えっ・・・？」

「お願いだから見てて」

「あ、うん・・・」

見たくない気がした・・・

ちあきが見ない方がいいと言った理由

多分　見てるのもつらい浮気が始まるんだ・・・


「ああ、御主人　いいっ、最高っ」

自分から腰を振って乱れる田中さん・・・

すごい淫らだよ・・・

でも　痛々しいよ・・・

お願いだから　泣きながらしないでよ・・・

「やがみさん　撮って」

「えっ・・・」

「浮気してるわたしを撮って」

泣きながら頼まないでほしい・・・

「見て　浮気してるのよ　あんたよりずっと　気持ちいい」

痛々しすぎる・・・

なんか　わたしまで涙が出てくる・・・

「何で気持ちいいのよ、愛してるのに

なんで　ご主人様の方が気持ちいいのよ

いやだ　いきたくない　あなた以外でもう

で、でも　いきたい　　ああっ　いやだ　ああっ」

もう自分で何を言ってるかわかってないと思う

おしっこまでもらして・・・

「うわあああん　ごめんなさい　ごめんなさい」

漏らしちゃったことになのか

御主人への言葉なのか

あやまりながら号泣する田中さん

涙ぐみながらうつむくわたし

何の解決もしないじゃないの・・・？

どうするのさ　ちあき？


でも・・・

答えは　わたしの予想を越えて・・・

越えてかな・・・？


泣き止んで落ち着きを取り戻した田中さん

「ごめんね　やがみさん」

「えっ、あの　田中さん・・・？」

「うん、何？」

「大丈夫・・・？」

「えっ、あ、うん　なんかすっきりした」


それはよかったと思うけど

わたしは　なんかすっきりしない・・・

あれだけ　騒ぎ立てて

騒ぐだけ騒いだら

何事もなくすっきりした顔して・・・

この人は何・・・？

ちあきから説明されて納得・・・


言われれば　田中さんの行動

これって　子供の・・・

子供って泣くだけ泣いて・・・

泣き止んだら　あっけらかんと・・・

まさに　それだ・・・

田中さんって・・・

でも・・・

この理屈でいうと・・・

御主人がまた浮気したら・・・

泣きながら浮気をしに・・・

　　　　　　　　　　　・・・また来るわけね