即興詩・君は死神

僕の全てが暗闇に覆われていた頃の話だ
月夜の晩、なにもかも嫌になり地に倒れ伏した
夜空に輝く星を見て、僕も星になりたいと思った
そんな時君は現れた
美しい君は僕に笑顔で手を差し出した
握りしめた手は驚くほど冷たかった
ああ君は死神
僕を連れていってくれるんだね


君は花の匂いを振りまき僕を包み込んだ
わたしにはこんなことしかできないから
そう微笑む死神に武器はいらなかった
君がそばにいるだけで僕の心は奪われていった
そうだなにもかも奪っていってくれ
僕はもうなにもいらないから
この命をあげるから
僕をはやくはやく連れていってくれ


だけど死神は僕の命を奪わずに消えてしまった
心だけ奪い尽くして消えてしまった
残酷な死神　僕はどうやって生きればいい
不器用な死神　どうして僕を連れていかなかった


君は死神
美しい死神
君の失敗のおかげで僕はまだ生きているよ

君は死神
心優しい死神
君にまた会うために僕は生きているよ
君にこの命を差し出すために

君は死神
僕を連れていってくれ

君がやってきたあの美しい世界に
僕を連れていってくれ

君が還っていったあの美しい世界に
いつか僕も会いにいくから

君は死神
美しい死神