鳥葬の谷

翡翠の柱をにぎりしめ
俺はつめたい石の上
墓石の表は楔形
何年たとうが見るひとが
なにはともあれ眉ひそめ
ああこいつかよ、そうだよね
いろんな努力は認めるよ
何度もなんども指さして
おそれいったか愚か者
死に恥さらしてお詫びしる
やがては天なるハゲワシの
妙なる頬骨大腿骨
ささみに胸肉もも肉に
風切り羽から毛細管
大逆転だぜ腐肉の華
うかつにさわいだオマイラも
所詮は祭の後始末
うまいなあんたと一人ごち
ゆくあてしらずの迷い蜂
パンデミックはのがれても
それみろ後ろ、鏡の像
四方にさらすは醜悪の
きわみをつくした別の顔
うれしかろう、それうれしいね
用意はいいか、この屑が
そんなことでもせぬかぎり
妄想暴走ほろぼそう
BGMはバロックで
おねげいしますぜ閻魔さま
さてはこのたびわたくしの
黄泉つ國への道中に
腰紐ひきひき随行の
炬眼の童子のかんばせは
あぎゃうぎゃうへえ、いきうつし
俺のかおに、いきうつし
脱衣婆艶笑ながしめで
俺を見すえていいますた
にいさん、あたしにふれてみな
あたしのあそこにふれてみな
そこにはあんたの二人目の
息子の影がやきついて
あたしゃあ随分難儀した
そこでだ、どうだい可愛い子
あたしを見事にイかせたら
閻魔さまにはナイショにね
謁見まえのあんたなら
あんたじしんは無理だけど
そこなるあんたのコピーかね
そいつを娑婆に、おいといで
そいつがあんたを真似ながら
娑婆を浮世と見定めて
いきてゆくのをながめても
それはそれでおつなもの
さあどうするね、どうするね
あんたはそれを見るだけさ
血膿のプールでいいきぶん
血蟲があんたをカむけどね
あたしが背中をかいたげる
ながめてそれで、しまいには
あんたとそいつは一体化
同化しようがどうもない
いいだろそうだろそいつには
魂なんぞ、ありはせぬ
あんたはナガメていい気分
あたしの男になってみな
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