悲哀

思い出しては、ならぬものは、けっこうある。

桜がちりはじめた。幸福と、その必要条件がみたされてる、ってみんな自分のオーラを粉飾しながら、どうにかこうにかこの季節の醸成する社会の方向性ってんですか。これに、ひっしでのっかろうとする。

俺は見えるでえ。あそこに、あのブルーのシートに座して、かなり酒がまわり、手たたいてなんか変な社歌みたいなのを若い衆とやけっぱちにがなってるおっさんの、背後には、誰もふれてはならぬ過去が鎮座しているのが。

暗くなってから、俺は仕事場の裏にある公園に出てみた。ソメイヨシノの落花は一面をピンクのドットでかざりたて、そうして樹上には未だ一瞬の閃きのごとき開花。桜ってのは、ほんと、ものすげえね。こんなものを自然がつくってしまったのを、俺らジンルイは、いやニホンジンは、呪うべきなのかもしれぬ。