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消された漫画家

2017年04月09日 06:38

消された漫画家

今村復興大臣を従え
冨岡町を訪れた総理

改めて謝罪し火消し
に躍起だが今村大臣
顎を突き出す仕種は
流石に控えて見える


写真は映画『ひそひそ星』から





劇場政治ならまだしも、激情政治は戴けない。
新人では、仕方がないのだろうか。


復興大臣は、この5年で5人目。5人中、4人が初入閣となる。
後の1人も、事実上の初入閣だ。


関東大震災では、復興に実力者を置いたが、安倍政権では、新人研修機関になってしまっている。


実力者には逆らえず、復興予算も、各省庁に好き勝手に使われ放題。



復興予算20兆円強の内1・4兆円が各省庁に流用されている(2014年会計検査院指摘)

宮城県発】
東京都ふじみ衛生組合←51億円
東京都西秋川衛生組合←19億円

岩手県発】
大阪府堺市←86億円
埼玉県川口市←36億円





政府はODAを使い、日本原子力発電原発輸出の調査をさせている。
ベトナム・ニントゥアン省第二原発の受注を目指して一昨年の時点で28億円が使われ、内、5億円に復興予算が使われた。


そして、野党やNGOなどが再三資料開示を求めるも、いまだに公開はされていない。





毎年変わる安倍政権下の新人大臣では、被災者に寄り添う有効な手立てがどこまでできるのだろう。


そこにきての、支援の打ち切りに対する西中記者の質問だった。


支援自体は、既に自立されている自主避難者の方もおり、今必要なことは何なのか、考えるべき問題は多岐にわたる。


西中記者の質問の仕方にも異論があるだろう。


私自身は、西中記者、よくぞ喰らい下がった、と拍手を送りたい。


フリーだから、できたとも云えるが、原発絡みで政府に楯突くのには、かなりの勇気が要ることになる。


私自身がその怖さを間近で感じたのは、当時仕事で出入りいていた小学館で起きた、『美味しんぼ』《鼻血問題》の騒動だった。





美味しんぼ』[福島真実]は、前半は丁寧な現地取材に基づき、風評被害に苦しむ農家を紹介している。

原作・雁屋哲サンは自身のブログでも農家を紹介して力になりたいが、如何せん、雁屋のブログアクセス数が多くない。

そこで、漫画家西原理恵子サンに相談すると、彼女が自分のブログで紹介してくれた。
彼女ブログは人気が高く、農家の在庫は瞬く間に完売したそうだ。



だが、[福島真実]編は、後半になると、急に論調が過激になる。



明らかな認識違いも見受けられるが、一つには雁屋氏が海外在住であることも大きな要因。

取材されたのが、2011年と2012年。

2011年の時点なら、鼻血のことはかなりビビットな問題だったけど、作品発表当時は、2011年時点とは意味あいが違う。

その辺のタイムラグがあった気もするが、「福島から逃げる勇気を持て」は、やはり云い過ぎだ。



さて、《鼻血問題》騒動なのだが、何故、あそこまでの騒ぎになったのだろうか。



実は、福島での《鼻血》の描写は、他の漫画でもあった。

『今日もいい天気原発事故編』
山本おさむ双葉社 2013年

やはり執拗な苦情はあったけど、『美味しんぼ』と違うのが、苦情が作者本人に対してであり、苦情を云う方の顔が見えていた点である。



では、『美味しんぼ』の《鼻血》は、どのように騒がれたのか。



一番最初は、小学館編集部員の失策から始まる。



美味しんぼ』[福島真実]編の《鼻血》の描写が描かれた原稿、そのコピーを担当の編集が関係省庁に送ったのが、雑誌掲載の10日前だった。


この内容でも、問題はないのかと。


先ず、ここで、二つの失策がある。


憲法で保障されている表現の自由侵害する《事前検閲》を、出版する方から求めている点が一つ。


また、それ以前の『美味しんぼ』連載では、再三、政府と東電の責任を追究している。


利害が敵対する相手に対し、事前に原稿を見せるとは、通常はあり得ない。



これは本来、右翼総会屋の手口。

「お宅に不利な記事があるんだが、まだ掲載前なんですよね。
時に、当社は出資者を募っていて一口◯◯◯万円なんですが……」



ところが小学館、強請もしないで、お伺いをたてている。



・ド素人が!

・訳の分からんこと、しやがって!!

・懲らしめてやる!!!



これで、右翼の怒りを買ったのか?

そんなことは、ない、ない(笑)

後で右翼が出てくるけど、それは政治家の依頼によるものだ。



話をお伺いをたてたところに戻すと、省庁からは「掲載に問題はないが、検討させて欲しい」との返答。


その翌日、小学館には事前連絡は無しに、国会で『美味しんぼ』が取り上げられた。
議員たちが原稿のコピーを回し読みしていたのは、そういう経緯からだった。


そして『美味しんぼ』を掲載する小学館の『ビッグコミックスピリッツ』の編集部に、朝の10時~夕方6時まで、苦情の電話が殺到する。


編集部の全回線が、日中の8時間、完全に苦情電話だけで占領されてしまっていた。


また、国会で問題とされた鼻血の描写がある『美味しんぼ』が掲載される『ビッグコミックスピリッツ』発売の月曜日に、右翼団体主導の抗議の市民デモが予告された。


当時の小学館は自社ビルを建設中。
間借りしていたテナントビルと連携し、警察に警備を依頼した。


果たして当日、街宣車は来たけど、私服デモ参加者は僅かな人数。
警備についた制服警官の数の方が多かった。


通常は、デモの警備には制服の他に私服公安が入るが、あの数では紛れこむこともできなかっただろう。


そして皮肉にも、この日に発売の『ビッグコミックスピリッツ』は完売した。


関係者に配られた見本誌以外は、全てが売れた!
現在の出版業界では考えられない快挙である。



だが、苦情の電話が鳴り止むことはなかった。

・何故、こんな漫画を載せるのか?

雁屋哲ブログで、こんなことを書いている。
あんなことを書いている。
許せない。



激しい口調が、1時間は続く。

それが終わっても、途切れることなく、次の苦情の電話が鳴る。

それが、編集部の全回線で、だ。

それが日中、8時間続く。


編集部は、漫画家との打ち合わせ、原稿回収、その他の各編集業務を、深夜に行わざるを得なかった。


私はある日未明、近くの編集部にいたのだが、編集部から怒鳴り声。
仕事の電話のやりとりらしいが、殺伐としたものだった。


編集部は、疲弊していた。


雁屋氏が『美味しんぼ』を終わりにしたのは、苦楽を共にしてきた編集部の皆を、これ以上は苦しめられないという気持ちからか。



何せ、自分には苦情が来ないのだ。



編集部への電話に、「雁屋のブログ」とあるが、本人のブログアクセス数は増えてはいなかった。


当然、《炎上》などはしていない。


雁屋自身が、「文句は俺に云え!」と幾らブログに書けど、それを読んだ文句は全て『ビッグコミックスピリッツ』の編集部への苦情の電話となった。


このネット社会に、何故、電話なのか?


戦略的には正しい。


雁屋に対しては、本人を攻撃するより、周囲に被害が拡がる方が、これは堪える。


事実、切迫した危機的な状況に、雁屋氏は自ら舞台を降りた。





だが、的を射た戦略だとするなら、それは組織だったものなのか。


だが、それにしては、苦情電話での凄まじさに比べ、実際の市民デモのショボさは何だったのだろう。


苦情電話は、人海戦術お仕事で、デモ参加者の人数を集めるのには、手が回らなかったということか。




政府の指示だとまでは、思わない。


だが、政府筋の意向を誰かが忖度したのなら、それはあるかも知れない。


純粋に福島県人の怒りとしての、はげしい激しい苦情とするには、あまりにも歪な激しさだった。




西中記者が、消えないことを祈る。

このデジログへのコメント

  • としほ 2017年04月09日 08:08

    当時、私はとても腹が立ちました。焚きつけた側の人間達のこともです。
    政府がやったとは思いません。どんな人が苦情を出していたのか分かるからです。
    正義を振りかざす人間はどちら側も私は嫌いです。

  • ウルトラ7 2017年04月09日 08:53

    > としほさん

    被災された当事者からの視点で
    見える風景があるのでしょうね.

    私が見たのは小学館側の風景.
    電話攻勢一本に絞った攻撃は
    敵(が居たのなら)ながら
    天晴れな戦略でした

  • ババロア 2017年04月09日 20:19

    ネガティブ要素が含まれる事柄の苦情は執拗で、謝ってもお気に召さないわけで後味も悪い。

    部分描写に踊らされないようにしたいけど、熱くなった鉄はどーにも出来ないのがもどかしいです。。。

  • ウルトラ7 2017年04月09日 23:21

    > ババロアさん

    同じ苦情でも当人に対してなら
    まだ対応しようがある.

    それでも炎上するのだから
    ネット社会のヘイト志向は厄介だが
    『美味しんぼ』は
    炎上していないだけに更に厄介

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