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干拓地奇譚(12)

2010年02月25日 16:04

「いや、もってまわった言い回しは止めとこうか」

地面でまだアバレてるその奇形フナを、彼は靴で水際へとゆっくり押しやる。異常なほどの元気さを維持していたそのフナは、水を認識するや更に大暴れし、そうして、十分な深みまで身をばたつかせて移動した。

外道の怪物フナは、再度自由となり、沖へと泳ぎ去った。

「あれはな、所謂『被験体』。まあ本格的に開始されたか」

まただ。意味わかんねえ。。。しかしおいちゃんは何ごともなかったかのように、ネリエサで針を丁寧にまるめ込み、無駄のない竿さばきで沖へと投げこむ。で、木で鼻をくくったように、

「一回、おまえを M島へつれてって、釣りとかしてみるかなあと、思ってますっと」

へ?すげえ!嬉しいぜ、どうしてどうして?!なんでイキナリ?しかし、ヘソまがりで用心ぶかいガキである俺は、ちょっと沈黙してみた。次の言葉をまったんだ。

「まあ行って釣りやるだけだったら、いいかなあと」

いや、ほんとに意味わかんねえ。行って釣りやって。。。そうか、どうやら生物系の研究者みたいだから、あそこの周辺の生物をいろいろと見せてくれようとしてんのかな?てか、なんでイキナリそんなにやさしいのよ?

「おいちゃん、M 島に行ったことあるんすか?」

「。。。まあな」

あそこ鉱山会社の所有物ですよね。いまいったいどうなってんすか??」

「。。。おもしれえことにはなってる」

彼はチラリと俺を見る。やはり、冷酷な、射貫くような眼光。

「ま、おまえにナニかあったらおまえも親御さんも可哀想だし、俺も確実に同定されてバラされるしな」

バラされるって何だろ?

「そんなあぶねえところなんすか?。。。俺の友達のオヤジが釣り船もってて、H 島の方へはよく行くって言ってましたよ。M 島の方は。。。」

「まあ漁船も近づけねえ感じになってきたな。委託うけた警備会社が相当なコストかけて着岸を制限してる」

「。。。へ?じゃあ行けねえって事すか」

「いや。。。まあ、説明しにくいんだ、が。。。登録うけた漁業関係者と、会社の人間ならば、島の一区画をのぞいてブラつく事が出来る。俺は、漁業従事者として登録申請中。仮登録証があるから多分問題ない」

その瞬間、何か猛烈に皮肉な苦笑いがチラと見えた気がした。

で、ここに来て俺は、話の筋としてごく自然な疑問を、おそるおそる口にしてみた。

「おいちゃん、あの島と、ここらへんの汚染って、なんか関係してたりするんすか?なんでイキナリ、M島に行く話するんすか?」

「。。。たしかに変なハナシの流れだったな。すまんな。ふっふっふっふ。ま、率直にいうが、おまえの事がまだよくわからんのでな。いろいろと、試用という事」

もう完全に混乱。俺がナンかの実験台にされようとしてるってコト?しかし、なんかワザと恐がらせようとしてねえか、このおっさん

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