- 名前
- 埋葬虫
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- 54歳
- 住所
- 東京
- 自己紹介
- ひさしぶりに書き直してみたぞ。うっひゃっひゃ
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干拓地奇譚(8)
2010年02月20日 00:56
「....つまり多環芳香族受容体は、要約すると、細胞内の転写因子と複合体を形成する。こいつが、いままで見向きもしなかった遺伝子の特定部位に、へばりつくわけだ。いいか、このAhrっていう仕組みがあるから、ダイオキシンは遺伝子への影響を特徴とする。ダイオキシン自体は、見むきもされない、つう意味で、遺伝子を破壊なんてしねえ、ってこった。で、『へばりつく』ってのは、分子同士が微妙にかつ複雑に電子を共有する、つう事。高分子化学の基礎だ。理解しとけよ。電子を共有すると、物理的に離れられなくなる。それは電気的な相互作用だ。細胞内の.......」
俺は PCB という物質についての「事実」を手短に説明してくれるものと期待していたんだ。なんでそれが、これほど危険視される毒物なのかって事を。
しかし。それからのおいちゃんの話は、到底、そこ数時間でおわるようには見えない専門領域の話へと移行していった。ガキ相手に何はなしてんのこのおっさん、と俺は辟易した態度をとりつつも、もう、必死。
図書館で時間をついやし、とにかくそれなりに「理解した」と自認していた専門用語の意味を、脳をフル回転させながら記憶のガラクタから見つけ出しては、つむぎ合わせる。。。
主として問題をおこしているコプラナーPCBが、分子構造として「平面構造」らしい、という事、それが、一般にいわれているダイオキシン(ベンゼン環が二つの酸素で融合した形)と構造的に相似であり、故に細胞内での挙動が似かよっていて「ダイオキシン的」に問題を発生させる事。またそうであるが故、コプラナーPCBも「ダイオキシン」として一括りに語られる事。
俺がその時おもった事は、まあチュウボウの素朴な感想の域を出ないわけだ。何をおもったかっていうと、「じゃああれか、このベンゼン環を(酸素でだろうが何だろうがとにかく)平面様にくっつけて、適当にハロゲン分子を周囲にはべらせると、かなりヤバい毒が、それこそ何千何万種類って出来ちまうってことか?」だった。
「....そこでナニがおこるとおもう?核内で転写因子と複合体を形成して遺伝子のXRE領域に結合。それはな、スイッチだ。XRE遺伝子のすぐ下からな、二重螺旋が開いてゆく。いままで、『読解禁止』だった情報が、『読みとける』ようになるんだ。おめえも核酸塩基くらいは知ってんだろ。アデニン、グアニン、シトシン、チミン。それらの並びが露出するんだ。コンピュータん中の情報としてのビット列が、バイナリエディタで丸見えになるようにな」
だめだ、もう、わかんねえ。しかしもんのすげえ面白え。
「そこから遺伝子が読み取られてメッセンジャーRNAになる。RNA も核酸塩基で構成されていて、それは一個一個、オリジナルのDNAから『コピー』される。で、それは、核外に出ていって、リボソームでその情報に基づいて、いろぉんな蛋白質の製造が開始される。いいか。このリガントとよばれる転写因子とくっついちまう物質、ダイオキシン、この種類によって、読みとかれる遺伝子の情報、ひいては生成される蛋白質のヴァリエーションが変わってくるわけだ。無論ムチャクチャにくっついて読み出すのもあるがな」
わかった。。。たぶん。。。ダイオキシンによって、蛋白質が出来ちゃんだけど、それが必要じゃないつうか毒な事が多い、いろいろ種類があるけど、ってコト?
「2ー3ー7ー8 四塩化ジベンゾパラダイオキシンは有名だ。ベトナムで枯葉剤として米軍が散布した。被害は、40年後の今も持続している」
うぅっっわあ。。。。。
「で、だ。。。こっからがヤバいんだが」
ナニ?なになに??もっとヤバいんすか。。。。
「色々とな、ダイオキシンの構造を操作して意図するモノが作り出せるとするじゃねえか。どういう風につくるかってえと、人間の遺伝子のある特定部位のXREにくっつく、というように出来るんじゃないか、って話は、ナルホドそうだろう、と思うか?」
うん、おもう。つうか、わかんね。。。
「で、その特定部位ってのがな。。。不活性遺伝子だったりも出来ちまう」
へえ~。。。で、ええとアタマ破裂しそうなんだけど。。。
「。。。おい、きいてんのか。ナニ沈黙してんだ」
「。。。。おいちゃん、俺、PCB のハナシを聞いただけなんすけど」
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