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そこに鈴が落ちていた

2010年02月17日 08:20

これは、昔の会社の後輩の話。彼は両親がプロの音楽家。本人も子供の頃、父親の友人だったあの世界的指揮者、O沢S爾からピアノを高く評価されたと言う人。普段は周囲をひたすら明るくする、楽しい喋り好きだったが。ただ、感受性の異常な鋭さを感じさせるところがあった。
彼は、高校時代山岳部。大学に進学して、夏休み。その頃の仲間で丹沢トレッキングキャンプに行くことになったと言う。待ち合わせて。ひとり来ない。家に連絡をとったが。連絡がどうしてもつかない。携帯などない時代のこと。その彼は行き先のキャンプ地は知っていた。あとでひとりで追い掛けてくるかもしれないよな。そんな話。あきらめて出発。夕食の時間になったが。とうとう来なかったな。急用が出来たのかな。と、皆で…
そのままの夜更け。話も尽き、眠りにつく。ふと。目が覚める … ちりんっ。ちりんっ。鈴の音? … あいつ!あいつだ!!
実は、その彼は登山の時いつもリュックに鈴を付けていたと言う。そう、その彼の鈴の音。違いない。ちりんっ!ちりんっ!徐々に近づいてくる。鈴。ちりんっ!ちりんっ!気がつけば。皆、目を覚ましている気配。あいつこんな時間に追って来たのか!ちりんっ!!ちりんっ!!とうとう鈴の音は、テントの前まで来て。やんだ…
! … 誰ともなく。恐る恐る。外を覗くと… 誰もいない…
錯覚? の筈もない。皆、聞いている。確かに。言い様のない不安。駆られたまま。確認… の手段もない…
そのまま… 一晩… 誰ひとり、眠りにつけるものはいない…
ようやく、朝。重い気持ち、まま。ひどい寝不足。お互い目をこすり、言葉少なく。誰も触れない。そのことには。沈んだ朝食。簡単に。やがて、片付け… ふと… !
地面。光るもの。鈴!テントの真下。だった、その場所。そう、それは。彼の、鈴!!
あとでわかったことだが。彼はその日連絡する間もなく、急用が出来たらしい。連絡は諦めて。そして、深夜。バイクを走らせていた。彼。事故事故死!そう、あの時間…
皆が、鈴の音を聞いた。あの時間。あれほどはっきりとした。鈴の音。皆が… 
翌朝。見付けた彼の、゛鈴゛。しかも、テントの真下から。それにしても、゛鈴゛は…
ありがちなつくりの怪談、とも言える。それが本当に間違いなく、後輩の身に起こった事なのか… 話好きの彼。又聞きの脚色なのか… 分からないけど…

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