- 名前
- callo
- 性別
- ♂
- 年齢
- 58歳
- 住所
- 東京
- 自己紹介
- ドキドキさがして ときどき うろうろ・・・
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いくら抱きしめてくちびるを重ね、キミの漏らす吐息に耳を傾けても、やっぱりキミの心の在り処はわからない
2009年08月23日 00:21
酔ったふりをしたのではなくて、ボクは本当に酔っていた。
この季節の、こんな桜並木が
いったいどんな様子なんだか、まったく知らないけれど、
ボクは暗がりを目指していたことは、確かで。
なぜなら、ボクはキミのことを抱きしめたかったから。
抱きしめたくなったから。
蚊に刺されるのは避けようと、
ボクは歩きながら、キミに、腕をとるように促すと
20センチぐらい、身長の差は、あるんだろうか?
キミはボクの、腕の差し出し方がおかしい、
なんて、ダメだしを始め、
改めて、ボクの左腕をとる。
ねえ、なんていいながら、
ボクは歩みを止めて、キミをこちらに向け
ちょっと立ち止まってくれるかな。
で、こっちを向いて欲しい
と、キミの両腕をかるくつかんで、
ボクに向かせる
キミはちょっと驚いたように、
両腕を縮めて胸前で丁度、祈りを捧げるように
手を組む
ボクは自分の胸の中の君の腕を押しひしぐように
キミの背中に手を回し
おもむろに、キミを抱きしめる
そして、外堀の、向こう側にある、東宮を見つけ
キミを抱きしめたまま、180度廻って
あそこにね、皇太子夫婦が住んでいるんだよ
東宮、っていうのね
とかなんとか、いうと
キミはクスクスと笑う
その微笑が浮かんだままのくちびるに
ボクは20センチの差を越え
俯くようにして自分のくちびるを重ねると
キミは、一瞬にして、凍りつく
なんて、いい香り、なんだろう。
ボクはなんだか、
半年も待って、待って、
我慢を重ねて来たことを取り返したくて
掃除機の吸い込み口みたいに
キミの耳から首筋にかけ
なんどもキスをしながら、降りていくと
キミは
ああ、なんていう
ため息ではなくて、
失望の篭っているような
そんな声を漏らし
人が、
人が来ているよ
と、慌てたように
ボクに訴える
いいよ、そんなの
なんて、いいながら、
キミを強く抱きしめると
キミはもう諦めたかのように
いろんな力を抜きはしたんだけれど、
胸前に組んだ両腕の、
手のこわばりは
全然、抜けていかない。
そして、もっと絶望的なことに
キミのくちびるからは
喜びもどきめきも、
或いは苦しさも、拒もうとする怒りも、
何にも伝わってこない、ということ
渇いてしまったままの、
潤いのない、こころそのもののように
何も訴えるものが、なかった
その後、キミは
どうにも心の所在が掴めないにも拘らず
目頭を、抑えるような仕草を幾度か
繰り返し、
なぜ、こんなことを、するの?
と、ボクに尋ねる
キスに、こんなに理由を求められたのは
初めて、な気がするけれど、
気持ちが全く萎えてしまったボクは
どうしても、本当のことを云う気にはなれなくて
今、自分がいる場所が、
よくわからないんだ、
だから、キミの何かを
確かめたくって
もうひとつ、
ボクを思って欲しい
その一点だけは、ほんとのこと、だったけど。
そんな言葉に
キミは、
「キミのことは好きだけれど
キミの真意が、つかみきれないまま、
自分のこころさえ、隠すように
けれど、言い訳めいた言葉ではなく
しっかりとした意志の裏付けだけしのばせて
自分を護るかのように、
境界線を侵犯した男に対する
厳しさと諦めと、
哀しさと後悔と
軽蔑と軽侮と
そんな思いを滲ませて
必死を
なじろうとする
大きなホテルを過ぎ、
弁慶橋に向かいながら
ボクは、もう少しだけ、話す時間が欲しいとキミに告げると
キミは小さく、こくりとうなずく
ブリティッシュ風の
やたら外人客が多いその店で
フレッシュジュースと
麦酒1パイント×2を飲み干す間
いったいなにを話したか
全部は覚えていないけれど、
確かなのは、
ボクは自分が
キミにとって
どういう存在なのか、
確かめたかっただけ
ということなんだけど、
やっぱりボクは
キミにとって
全然魅力のない
100円ショップの、プラスティック製品みたいな、
そんな存在、にしか、見えないんだけど、
ボクは明日から、
何を思って、
キミのいる街を
訪ねれば、いいんだろう・・・?
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