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セックスばかりしてたそのホテルがなくなってしまってたことよりそれに何も感じない自分に驚いたこと

2009年03月24日 21:49

セックスばかりしてたそのホテルがなくなってしまってたことよりそれに何も感じない自分に驚いたこと

夕暮れ時、
ずるをして、早めにオフィスを切り上げ
上野駅までの20数分を歩く

おなかが空いていることを忘れ、
確信犯的に、その道を選んで。

もう、何も思うところはないはずだ、と。

でかいコックの広告塔の店脇を過ぎ、
ひょっとして、出会うべきひとと、
そのひとが、いま、愛するひとと、
遭遇したり、しないものか
とか、先日の非通知着信もあって
あれやこれや、楽しい妄想が次から次へとわいてきて・・・

飲食店
古書店
横断歩道・・・

目印は、歩道橋だった

けど、なぜか、見つからない
行き過ぎた、と思って
その場所を探ると、
高い工事用フェンス

そのひとが泊まっていたホテルは、
跡形もなく、更地になり、
今日は工事をもう終えたのか、休みなのか、
掘削機やらのアームが静かに虚空に突き出ていた
あまざらしの、ペニスみたいに

何を思い出したい訳でもなく
痛みを確かめたかったわけでもなく、
記憶の断片すら、すでに朧
なんら感懐も、なし

ボクはその年の秋
そのホテルの一室で
21日の間、
くるひもくるひも
セックスばかりしていた
毎日、何時間も、彼女とつながっていた
彼女は、廊下に響き渡るような
大きな声を、
朝も、昼も、夜も、明け方も
ずっと、あげていた
その部屋も、ホテル
もう、どこにもない


圓朝終焉の地に建つ、救世軍の鐘が
かすかに朱く、陽に染まる

定食屋の、看板灯の赤い文字

ちっとも美味しいものなんて、
食べなかったっけ

いや、違う

ちっとも美味しいものを
食べさせてあげられなかった
そのことだけが
ボクの胸を刺す

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