- 名前
- callo
- 性別
- ♂
- 年齢
- 58歳
- 住所
- 東京
- 自己紹介
- ドキドキさがして ときどき うろうろ・・・
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金曜日の裏側で・・・
2009年01月17日 22:58
大川の、たゆたう水面の蒼が、その深さを増し
それと符牒を合わせるかのように
寒空から夜の帳が下りる頃
ボクはキミにメールを認める
「そこから駅は4つ目、昭和通の真下
着いたら電話を鳴らして下さい
たぶん、ボクが先に着いていると思うから、
A4の出口を目指して・・・」
オフィスを出たキミは、
人目を気にしているのか、
どこか落ち着きを喪い、
目を宙に泳がせ
脚は駅へと向かう
もう街は、
色白のキミの頬さえ溶かしこむ
夜の昏さに沈んでいるのに
ボクはといえば、福山雅治を
「まちゃ」
なんて呼ぶおばちゃんにあげた
CDのお礼だとかいう、
もらい物の佃煮だかふりかけだかを
冷蔵庫に忘れたことを
またしても忘れ、
差し上げものは
頂き物よりも気になるものなのか?
「なんで持ってかえってくんなかったの?」
なんていわれたばかりだったことを思い出し
急ぎオフィスへ帰り、
結果として、恐らく電車を二つ逃し
約束の場所へ向かうと、
外は予想外の寒さの中で、
改札を抜けたボクは急いでまた、
メールをしたためる
「寒いので、外へは向かわず
プラットフォームで待っていてください」
しかしキミは、そんな場所で
ボクと落ち合うことなんて、できない
なぜなら、同僚の誰が、電車に乗り合わせているか
わからないからだ。
目的の駅についたけれど、
ボクはキミの姿を探しあぐね、
電話をかけようとすると、
「エスカレーターをのぼったところにいます」
というメールが入る
寒いのに、とボクは慌ててエスカレーターへ向かうと
キミはその先の階段を、携帯を片手に、
しずしずと上っている
ばったり、誰かに見られたら、
ということなんだろうか?
ホームでひと待ちげなのも、
あるいは階段を上らずに立ち止まっているのも
たしかにおかしいけれど、
なにもそこまで、
なんて、ボクは少し
キミのこころを、
可哀想に思う
やましさなんて
どこにもないし、
どうしてそんなに、
窮屈になってるんだろう?
ただ、ボクという、ひとと会うだけで。
風邪気味だというキミが
電話の向こうで
小さくはなをすする音を聞いて
ボクはその店に行こうと決めた
そこは、ボクが消したい地図の、
その出発点にある店だったから
予定は少しずれ、
合流地点は変わったけれども、
後はほぼ、順調だった
フィルムセンターのドアをくぐると、
受付には二人の妙齢の女性
何人かのガードマンと、
チラシを並べる棚がある
ボクはその棚に手を伸ばし、
そこがなんの場所であるのか
何があった場所なのか
順を追ってレクチャーをしていく
「みなさん、何を待っているんですか?」
大勢の爺さんたちが座る椅子を見て
キミはちょっと驚く
それはそうだろう
あんな地価の高い街で
歩くのも大変そうな大勢の爺さんたちが
あんなに整然と、
あれほどまでに黙然と座っている場所も、
そんなに多くはない、と
改めて思いつつ
時々、その爺さんたちの間に混じって
爺さん見習いの、長島さんやボクや
婆さん予備軍のおかっぱさんたちが、
椅子に座っていることもある
なんてことはオミットして、
レクチャーを続けた
エレベーターを上って
展示室へ向かいながら、
無声映画の伴奏で
ピアノを弾いたドイツ人作曲家と
京都で出会い、
そのホールで、再会したことを
通訳をしてくれたひとのことを除いて、話した
それは地図を一緒に描いたおんなの子のことだ
エレベーターを降りると
ボクは小銭を取り出して入場券を購い
その半券を渡しながらキミを中へと誘う
入り口から30秒
京都の大雄寺にある
石碑の拓本、そのまた、縮刷版だろう
縦長の半紙に、縷々つづられた、
哀悼の言葉の前に立ち
夭逝した不世出の天才、
山中貞雄のことを
その親友であった
小津安二郎
それから、
日本映画史年表の中の
黒澤明というひと駒の話を交え
概ね50秒ぐらいで話した
面白いわけがない
けれども、伝える意味がなくはない、
と思いつつ
それはたたひとつ、
やがてボクが語るに違いない、
銀幕の女優と映画監督の
痛切な恋の物語を
少しだけ
キミの細胞の片隅に
記録してもらうために
そこかしこに並んだ
黴臭い陳列物に目をやりながら、
キミはやはり
そうするだろう、と思っていたとおりの
リアクションで
こちらの意図を忖度しつつ
こちらが息苦しくならない程度に
首の向きをかえながら、静かに歩いた
10分、もたっただろうか?
そうして身体を少しだけ温めてから
次はChocolateの店に向かう
※長いから、つづく。
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