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ポール・オースター 「幻影の書」

2008年12月09日 01:28

僕の大好き小説フリッカー、または映画の魔」によく似た小説です。

飛行機事故で一瞬に妻と子供を失い失意のどん底に落としこまれた文学部の若い教師ディヴィッドが、その灰色の生活の中でふと目にしたテレビの中に見つけた古い古い映画を見て思わず笑い、人生を動かし始めます。彼は、自分を再び生かしてくれた映画を作った監督を調べ、現存のフィルムを探して、観て、レポートにし、ついには、その監督について語られた初めての書をものします。
 すると、もう死んでいても不思議ではないほど高齢の監督がまだ生きていて会いたがっているという、監督(ヘクター・マン)の配偶者からの手紙が届く。
 ディヴィッドは、すでに自分の役割は済んだこととして取り合わなかったのだが、とうとう、とつぜん、若い女性が訪れて、ピストルまで突き付けてデイヴィッドをヒクターのところへ連れて行こうとする。
 失われた映画と、失われた映画監督にささげられた不思議な冒険のはじまり、はじまり。

 そう、「フリッカー、または映画の魔」に、プロットがよく似ているのである。でも、さすが、ポール・オースター、筆がたつ。ぐいぐいと引っ張って行って、最後までページを繰る手を置かせないのである。

 こういう本に出会えることがまれにあるから読書はやめられない!

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