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イースタン・プロミス

2008年12月07日 23:13

イースタン・プロミス

デヴィッド・クローネンバーグ監督作品で僕の好きなのは、「ヴィデオ・ドローム」「戦慄の絆」「裸のランチ」そして「クラッシュ」です。そのクローネンバーグがヴィゴ・モーテンセンと組んで作ったのが「ヒストリーオブバイオレンス」であり、この「イースタンプロミス」です。
見よう見ようと思っていながら見逃してしまったのが、例によって早稲田松竹で始まりました(「ヒストリーオブバイオレンス」と二本立て)ので、見てきました。
ナオミ・ワッツって、少しも美人と思わないんですけど、けど、それがこのような映画では、荒唐無稽な筋書きをいささか実話らしく思わせるのに役立ちます。デヴィッド・リンチ(クローネンバーグと同じデヴィッドですね)の「マルホランド・ドライブ」「インランド・エンパイア」も同じような効果で際立っています。「ステイ」は、ちょっとナオミ・ワッツの方向性がこんなのばっかりという感じがしていたのですがね・・。この映画で、ナオミ・ワッツはあまり重要な役ではありません(きっぱり)。ヴィゴ・モーテンセン演じるマフィアの運転手ニコライ(在英ロシアマフィア「法の泥棒」のボス息子の運転手)とお互いに恋心を寄せるのですが、それ以上の中にはもちろんならず、むしろ、ボスレイプした14歳の女の子タチアナが産み落とした赤ちゃんクリスティの後見人のような役割です。
 やはりヴィゴ・モーテンセンの押さえた演技が印象にのこります。冷静に死体の指を切り落とし、歯を抜くことで死体の身元を分からなくする作業や、体中に施したマフィア刺青。抑えた色調、暗い明度、裸の男たちの戦い・・・クローネンバーグの映画の世界です。
 イースタンプロミスとはイギリスにおける東欧組織による人身売買契約のことを言います。イギリスから考えたイースタンとは東欧のことらしいです。その(女性の)人身売買を行っているのが、イギリスに住むロシア移民による犯罪組織「法の泥棒(ヴォリ・ヴ・ザコネ)」です。映画では、このボストランスシベリアンというロシア料理レストランを営んでいるセミオンというおじさんです。物語は、タチアナという少女が、アンナナオミ・ワッツ)が助産婦として働く病院に救急車で運ばれ、妊娠していた赤ん坊は無事だったものの、タチアナが出血多量で死ぬところからはじまります。タチアナの日記をふと持ち帰ってしまったアンナは、伯父さんにロシア語で書かれた日記を読んでもらおうとするのですが(アンナロシアからの移民の娘なのですがロシア語はできません)、伯父さんは気が進まないようです。日記にはさんであったトランスシベリアというレストランにあって出会ったのがセミオンです。アンナはセミオンに日記のコピーを渡してしまったのですが、なんとタチアナレイプしようとしたのがセミオンの息子のキリルで、しかもキリルはレイプできず、かわってセミオンがレイプしたのです。完璧主義のセミオンは、わずかな秘密漏えいさえも嫌い、タチアナの日記を消し去ろうとします。そしてキリルの運転手のニコライに、アンナの叔父を始末するように命令するのですが・・・。

 うーん、ラストはちょっと楽観的すぎるのでは?と思いました。もっとひねりがあってもよかったかも。でも、なかなか楽しめました。映画館で見ると、ちょっと1800円はもったいないかな?DVDでどうぞ(ちなみに早稲田松竹名画座ですので、1300円です。最終上映回なら800円です)。

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