kiss on the mirror

夕暮れの、街はもう、
すっかり、
サンタが踊る季節になっている。

花を浮かべて流れる水の
明日の行方は知らねども
水に映した二人の姿
消えてくれるな何時迄も

髪にかざろか接吻（くちづけ）しよか
君が手折（たお）りし桃の花…



ボクのPHSを手にして
ボク以外の声に耳を傾けていることに
幾許かのジェラシーをおぼえつつ、

はやく切っちゃえばいいのに、
そんな電話

・・・なんて。

幾度か、おじぎするような仕草で
会話を終えると、キミは
普通の携帯と、形状もキー配列も異なって見えたんだろう
どのボタンを押すべきかわからずに、
一瞬ためらってから、電話のマークを押す

そう、それ正解、と言おうとすると
差し出しかけたPHSを自分の胸元へ戻し、
薄桃色のカーディガンの左袖を指で引き上げてから
ごしごしごし・・・

拭くなよ
拭かなくったって
いいよ・・・

自分の跡を、
残したくないのは、
それが、ボクの電話だからかい？

手渡されたPHSの液晶画面を、
外光にてからせて、確かめると
少しだけ、拭った筋のようなものがみえて・・・
少し鼻面を近づけたくなって
柄にもない、
フェティッシュな行為の倒錯を思って
ちょっと眩暈がした